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空き家に関する法律相談

空き家の管理責任とはどのようなものですか。

 昨今、適正に管理されない空き家等の増加が社会問題化しています。空き家が適正に管理されないと、周辺住民に、防災、防火、防犯、衛星、景観上の問題等、深刻な影響、損害を与える可能性があります。
 このため、国としても地域住民の生命、身体又は財産を保護し、その生活環境の保全を図ることを目的に、空き家等に関し、必要な施策を推進する必要があり、平成26年11月17日に「空家等対策の推進に関する特別措置法」が成立し、平成27年5月26日から施行されています。

 空家特措法3条は、空き家の所有者等は、空き家が周辺住民に悪影響を及ぼさないよう、適正な管理に努めなければならないと規定しています。
 もっとも、同規定は努力義務ですので、管理を怠った場合に直ちに法的責任を問われる訳ではありません。

 但し、空き家について、その設置や保存の瑕疵(壊れた塀が倒れて通行人にケガをさせたとか、はがれかけていたトタン屋根が風で飛んで隣家に損傷を与えた等)により、第三者に損害を与えた場合には、空き家の占有者(又は占有者が無過失の場合は所有者)が損害の賠償義務を負わなければなりません(民717条1項)。

一人暮らしの父が亡くなり、実家が空き家状態です。遺産分割未了のままで、どのようなことが出来ますか。

 所有者が亡くなり、相続が開始しますと、相続人が複数いる場合、空き家は遺産共有の状態となります。
 したがって、遺産分割未了の間は、民法の共有の規定に従うことになります。
①保存行為②管理行為③変更・処分行為によって、必要な共有者の同意の範囲が異なりますので注意が必要です。
 共有状態のままにしておくと、機動的な管理が難しくなり、誰も空き家に手を付けない結果、共有物の劣化が進んだり、周辺住民の迷惑が生じる場合もありますので、出来るだけ速やかに遺産分割協議を行い、承継する者を確定することが重要です。

①保存行為
 各共有者が単独で行うことが可能です(民252条但書)。
(典型例)
 ・修繕行為(大規模修繕を除く)、
 ・雑草の除去、樹木の剪定、
 ・塀・屋根の補修
 ・固定資産税の納付
 ・不法占有者に対する妨害排除請求

②管理行為
 各共有者の持分の過半数で決します(民252本文)
(典型例)
 ・賃貸借契約の解除
 ・占有者(使用者)の決定
 ・管理を委託する会社の決定

③変更・処分行為
 共有者全員の同意が必要(民251)
(典型例)
 ・売却
 ・担保権の設定
 ・賃貸借契約の締結
 ・増改築、大規模修繕
 ・解体

一人暮らしの父が亡くなり、実家が空き家状態です。勝手に解体してもよいですか。

 相続人が一人で単独相続となる場合には、もちろん解体は可能です。
 しかし、相続人が複数いる場合、空き家は遺産共有の状態となり、上述のとおり、解体は処分行為にあたりますので、遺産分割が未了の場合には、相続人全員の同意が必要です。

 他の相続人の同意を得ずに解体してしまった場合、他の相続人の権利を侵害したことになりますので、不法行為に基づく損害賠償請求を受けてしまう可能性もあります。

 解体すべきような不動産が相続財産に含まれる場合には、速やかに遺産分割協議を行って所有者を確定し、相続人の誰が解体手続を主体となって行うかを決めるとともに、解体費用の分担割合について話し合うことが必要です。

 解体後は、建物が登記されている場合、所有権の登記名義人は、滅失の日から1か月以内に滅失登記を申請する義務があります。怠った場合には、10万円以下の過料が課される旨の規定がありますので注意が必要です(不動産登記法57条、164条)。

 滅失登記が完了すると、登記所から市区町村へ登記完了の通知が行われ、空き家に対する課税が止まります。
 未登記建物の場合には、固定資産税の課税を止めるため、解体後、速やかに家屋の所在地の市区町村の担当課に家屋滅失届を提出する必要があります。

 なお、家屋に債権者の抵当権等の担保権が設定されている場合で、債務が残存している可能性がある場合には、債権者に確認を取り、負債の状況について確認する必要があります。

相続放棄を検討しています。相続放棄をした場合、空き家はどうなりますか?

 相続放棄をした場合、その相続については、初めから相続人とならなかったとみなされます(民939条)。
 相続人は、相続財産を、自己の固有財産におけるのと同一の注意をもって、相続財産を管理しなければなりませんが、相続の承認又は放棄をしたときは、この限りではないとされています。
 相続放棄をした者が相続財産の管理をしている場合には、速やかに他の相続人等に引き継がなければなりません。
 他の相続人等に引き継ぐまでは、相続財産の管理者が不在とならないよう、自己の財産と同様の注意をもって管理を継続しなければなりません(民940条1項)。

 相続財産の管理を引き継ぐことが出来ない、または全員が相続放棄をして相続人不存在となったような場合には、そのまま管理を継続していくか、家庭裁判所に相続財産管理人の選任申し立てを行い、相続財産管理人に管理を引き継ぐことを検討することになります。

 相続放棄が家庭裁判所に受理されたからと言って、必ずしも空き家を放ったらかしには出来ないということに注意が必要です。

親が認知症で施設に入所しました。空き家となる実家を売却したいのですが、可能ですか。

 空き家の所有者である親が認知症のために施設に入所しているのですから、売買契約を締結するには本人に意思能力がなければならず、売却は不可能と言わざるを得ません。
 空き家の管理を第三者に委託したくても、委託契約を締結することも出来ません。

 やむなく子などの親族等が管理を代行することにならざるを得ませんが、親族等は自分の生活もあり、負担が大きいですし、行き届いた管理が出来るとは限りません。
 親族等は換価処分を当然検討することになるでしょうが、親族等には空き家の処分権限がありません。その結果、空き家の換価処分の検討や管理の方法に関する検討が先送りになったまま、管理不十分の空き家が残存してしまうという事態になってしまう可能性があります。

 本件のような場合、「親が認知症になってしまう前に、本来は家族信託などを組むなどして上述のような事態に陥らないようにしておく必要があった」と結果的に知ることになるのですが、現時点での対処としては、空き家の適切な管理及び換価を行うため、家庭裁判所に成年後見開始の審判申し立てを行うことになります。

 ただ、後述するように、成年被後見人の居住用不動産の売却は家庭裁判所の許可が必要であり、機動的な売却が可能となる訳ではありません。

成年被後見人の空き家になった自宅はどのように処分すればよいですか。

 後見開始の審判がなされると、成年後見人は、成年被後見人の財産を管理します。
 通常の管理(保存行為等)は家庭裁判所等の許可は不要です。空き家の管理も同様です。

 しかし、空き家を売却する際には、成年被後見人の居住用財産の処分となり、家庭裁判所の許可が必要です(民859条の3)。成年後見監督人が選任されている場合には、同監督人の同意も必要です。
 家庭裁判所は、基本的に処分には消極的であることが多いので、処分の必要性について、十分に説明する必要があります。
 成年被後見人にとって、住み慣れた自宅を売却するということは心理的にも、将来の生活面でも大きな影響があります。
 成年被後見人の意思がどうであるのか、財産状況、現時点で売却する必要性、売却内容の相当性、今後当該自宅に戻る可能性の有無等、家庭裁判所は様々な観点で検討し、許可するかどうかを判断します。

 家庭裁判所に対する売却の許可申請は「成年後見人が、買主○○に対し、本件不動産(空家)を代金○○円で売却することの許可を求める」という内容となりますので、許可申請を提出する前に、ある程度売却手続きを進めておかなければなりません。

 売却手続を進めた後、万一家庭裁判所の許可が得られないと買主に迷惑となりますので、予め家庭裁判所に相談しながら売却手続を進めることになります。


 既に施設に入居して退去する予定が無い場合、「居住用財産」には当たらないという疑問が当然に生じるかもしれません。

 しかし、居住用財産とは、現に居住する不動産だけでなく、過去に居住していた建物、今後施設等を退去した場合に居住する可能性がある建物を含みます。
 更地でも今後建物を建築して居住する可能性のある土地であれば居住用財産に当たるとされることもあります。
 ですから、成年後見が開始されても容易に売却できると考えていると、意外と簡単には売却できないということに注意が必要です。
 成年後見人が選任されたとしても、必ずしも確実に空き家が処分出来るとは限らない、ということになりますので、親が認知症になる前に、家族信託などで対策を取っておくことが重要になってきます。

 家族信託のメリットについては、こちらをご覧ください。

遺産分割の対象財産の中に空き家があります。相続人に一人が認知症で判断能力がない場合、どのような対応が必要ですか。

 有効な遺産分割協議を行うためには相続人全員が関与しなければなりませんが、認知症で判断能力のない相続人は、遺産分割協議を行うことができません。

 このため、有効な遺産分割協議を行うには、あらかじめ認知症により判断能力のない相続人について成年後見開始の審判申し立てを行い、成年後見人の出席のもと遺産分割協議を行うことになります。

 成年後見人は、自由に分割協議ができるわけではなく、被後見人の利益のために協議に参加します。
 実務的には法定相続分相当額を確保することが必要とされており、協議の内容・方針については家庭裁判所と相談しながら進めていくことになります。

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