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モラルハラスメント

モラルハラスメントとは

 モラハラとは「モラル・ハラスメント」の略で、精神的暴力、精神的虐待、嫌がらせのことです。
 加害者は、殴ったり蹴ったりというような身体的暴行を行うのではなく、態度や言葉による嫌がらせを繰り返し、被害者に大きな不安や精神的苦痛、恐怖を与えるものです。
 モラハラというと、乱暴で一見して怖そうな人物が想像されるかもしれませんが、モラハラの実態はそうではなく、モラハラ加害者は、いわゆる外面の良い人物、社会的評価が比較的高い人物、親に甘やかされて育った人物、頭がよくて弁が立つ人物に多いのです。
 家庭という密室で行われ、巧妙で執拗な嫌がらせが続くのが典型的なモラハラです。
 これまで離婚相談を数えきれないくらい受けてきましたが、ご自身がモラハラの被害を受けているという認識が無い方、自分が被害者であるということに気づいていない方はとても多いです。 
 思いがけないときに理由もわからず怒られる、いつも夫の顔色をうかがってビクビクする、理由もわからず無視される、全否定されるといったことで、苦しい思いをしているのだとしたら、 あなたが受けているのはモラハラかもしれません。

モラハラ加害者のチェックリスト

 モラハラ加害者の典型的な行為を以下に掲げます。あなたが経験しているものがどれくらいあるのかチェックしてみて下さい。

□ よく大きな声で怒鳴る。強い口調で責める。
□ ドアを強く閉めるなど、大きな音を立てて威嚇する。
□ 長時間にわたって説教する。
□ 問い詰める。
□ あなたの実家や親せき、友人をばかにする。
□ あなたの外見や学歴・職歴をばかにする。
□ 「頭が悪い」「役に立たない」「何をやらせても出来ない」と言って侮辱する。
□ 子どもの前で侮辱する。
□ 子どもができないことをあなたのせいにする。
□ 料理に文句を言い、食べないことがある。
□ 突然無視する。
□ 異常に嫉妬深い。
□ 実家や友人、同僚との付き合いを制限・禁止する。
□ あなたの居場所や行動を監視する。
□ あなたの習い事や趣味など大切にしていることを制限する。
□ あなたには節約を強いるが、自分の趣味には時間もお金も惜しまない。
□ メールにすぐに返信しないと怒る。
□ 携帯電話を取り上げる。
□ 生活費を(わずかしか)渡さない。支出を細かくチェックする。
□ 「出ていけ」と言ったり、実際に閉め出したりする。
□ 本気で別居しようとしたり、離婚を持ち出すと、泣いて謝ったり、反省の態度を示す。しかしすぐに元通りになる。
□ 離婚を持ち出すと、「オレは法学部だ」「親友は弁護士だ」「お前は無職だから親権は取れない」「離婚しても1円もやらない」「離婚したら住宅ローンの半分は払え」「離婚するなら慰謝料を払え」という。

 モラハラは、日常的に繰り返され、それが徐々に当たり前のようになってきます。被害者の精神は少しずつ、着実に壊れて行きます。あまりにも辛いので、現実から目を背けたり、あえて思い出さないようにしたり、自分を納得させたりしている方もよくいらっしゃいます。
 まずは、自分はモラハラ被害者だったのだと自覚し、本当に配偶者と今後の人生を歩んでいくことを望むのか、真剣に考えましょう。モラハラの程度がひどい場合には、弁護士などの専門家に相談してみることをお勧めします。

モラハラ被害者のチェックリスト

 モラハラ被害者の典型的な状況を以下に掲げます。あなたにあてはまるものがどれくらいあるのかチェックしてみて下さい。

□ 夫の顔色を常に気にしている。
□ 夫の機嫌を損ねそうなことは言わないようにしている。
□ 夫の帰宅時間が近づくと緊張し、動悸がする。
□ 夫に頼まれたことは完璧にやらなければならないと思っている。
□ 夫が言うことが間違っていると思っても、反論できない。
□ 夫が楽しみにしていることには気が乗らなくても付きあい、楽しそうに振る舞う。
□ 友達から誘われたとき、まず思い浮かぶのは夫の予定である。
□ 夫が予定を変更して早く帰って来たり、外出しなかったりするとがっかりする。
□ 1人で外出すると、早く帰らなければといつも急かされている気分になる。

モラハラをやめさせることは出来るのか

 これまで多くの相談を受けてきましたが、 モラハラをやめさせることはとても難しいのが現実です。
 少なくとも、夫が自己の非を認めて謝罪し、改心し、その後一切のモラハラが無くなったと言うケースはほとんどありません。 
 モラハラ夫は、そもそも被害者との話し合いに応ずることはありませんし、自分の非を認めることもありません。
 被害者が本気を示し、離婚や別居を持ち出したときには、一時的に「悪かった、反省する。もう今までのような態度はしない。天に誓う。生まれ変わるからやり直してほしい」と泣いて謝ることが度々あります。
 しかし、実はほとんどのモラハラ夫がこのようなことを言います。
 モラハラ被害者は、根が真面目で優しい方が多く、「そこまで言うなら本気だろう」と信じて、せっかく決心した別居・離婚を思いとどまってしまうのですが、モラハラ夫が元に戻るのにそれほど時間はかかりません。
 何度も裏切られている方が多いのです。
 また、中途半端に話し合いを持ちかけた場合、かえってモラハラをエスカレートさせる危険さえあります。 
 まずは、 別居・離婚を決心をしたなら、話し合いは別居して夫の影響力を逃れてからで構いません。速やかに別居しましょう。その際、別居を事前に説明する必要はありませんし、別居後の住所も教えてはいけません。転居先に怒鳴り込んで来たり、子どもを奪いに来たり、嫌がらせを受ける可能性があるからです。
 住民票をそのままにして別居することが基本となりますが、どうしても住民票を異動する必要がある場合には、「住民票の閲覧禁止の支援措置」の申し出をすることができないか、役所に相談してみましょう。
 無事別居が出来た場合、その後の交渉について、モラハラ夫は弁が立ちますので、あなたでは太刀打ちできないかもしれません。
 速やかに弁護士に相談し、代理人として夫と話し合いをして貰うことをお勧めします。

モラハラの立証

 モラハラは、家庭内の密室で行われ、身体的暴行を伴わないことが多いので、他人に理解してもらうのは大変です。 
 被害者は診断書が出せるわけでもなく、加害者は外ではまともで、むしろ社会的評価を受けている人であるため、離婚の調停や裁判になっても、なかなか調停委員や裁判官に分かってもらえないこともあります。 
もし、あなたがモラハラ被害者であることを自覚したならば、別居の準備をしながら、モラハラ夫の行動をメモしたり、日記を付けたり、言葉を録音で残したり、写真や動画を撮ったり、毎日日記をつけたり、地道に証拠を残すことが有効です。
 また、友人や両親・きょうだいに相談し、場合によっては、裁判の際に証人になってもらうことも考えておかなければなりません。
 具体的に証拠が本当に必要になるのは、裁判になったときです。調停の段階では、必ずしも証拠は必要ありません。調停はあくまでも話し合いの場であって、事実認定の場ではないからです。ただ、調停段階でも、調停委員の理解を得て、調停を有利に進めていくためには、証拠があった方が良いことは当然です。証拠を見て、モラハラの心証をもった調停委員は、積極的に夫に働きかけてくれるかもしれません。


 ただ、モラハラは本当に辛いものです。上に書いたことはあくまでも精神的にまだ余裕がある方が行うべきもの、ご自身のことをまだ客観的に見られていると自覚されている方にお勧めしていることであり、「証拠を作るまで逃げてはいけない」ということでは決してありません。
 逃げることは恥ずかしいことでも何でもありません。あなたは被害者なのですから、別居のうえ、代理人を通じて、正々堂々と話し合いをすればよいのです。

弁護士に何を頼めるのか

 ご自身がモラハラ被害に遭っていると思ったら、とにかく一度、弁護士の法律相談を受けて下さい。
 別居・離婚するしないはともかく、今後の選択肢や流れ、かかる時間や費用といった情報を仕入れておくことに損はありません。
 そのうえで、離婚を希望されていると伝えると、弁護士はおそらく「まずは別居して下さい」と助言することと思われます。
 別居の方法は、自分で決めるしかありません。親、きょうだいを頼るのか、自力でアパートを借りるのか、支援センターなどにシェルターを紹介してもらうのか等々。
 別居が出来れば、あとは離婚成立まで、弁護士の支援を受けることが出来ます。

 弁護士には、通常、以下のことが依頼できます。

1 モラハラ夫との連絡・交渉
 モラハラ夫は、妻が出て行ったことを知ると、実家に怒鳴り込んだり、友人知人に手当り次第連絡するなどして探し回ることがよくあります。
 弁護士は、モラハラ夫に受任通知を出し、今後の連絡は全て弁護士にするように申し入れます。
 その後は、弁護士が交渉の窓口となりますので、直接モラハラ夫と交渉したり、顔を合わせる必要はありません。

2 離婚調停
 弁護士は、モラハラ夫と協議離婚の交渉をすることも出来ますが、夫が直ちに離婚に応じることはほとんど期待できませんので、事前の交渉なしにいきなり調停の申立を行うことがしばしばあります。

3 離婚裁判
 調停はあくまでも話し合いですので、話し合いがつかなければ離婚は成立しません。その場合は調停は不成立として打ち切られます。
 不成立となった場合には、弁護士に依頼して離婚裁判を提起することが出来ます。

4 婚姻費用分担請求調停
 モラハラ夫は、金銭にうるさく、生活費を十分に渡さなかったり、別居後は「妻が勝手に出ていったのだから払わない」と言って、まったく払わなくなることもあります。
 このような場合、弁護士に依頼して、婚姻費用分担請求の調停を申し立てることが出来ます。
 婚姻費用は端的にいうと生活費のことであり、離婚が成立するまでの間、モラハラ夫は必ず支払わなければならないものです。調停委員からの説明により、モラハラ夫もしぶしぶ納得して、一定の支払義務を認める内容で調停が成立することが多いですが、話し合いがまとまらず、調停が不成立になった場合には、審判手続に自動的に移行し、裁判官が金額を決めます。
 調停や審判で決まった金額を支払わない場合、弁護士に依頼してモラハラ夫の給料を差し押さえることも出来ます。

5 面会交流調停
 妻が子を連れて別居した場合、モラハラ夫が子に会いたいと言って面会交流の調停の申立が行われる場合があります。
 裁判所は、基本的に子の福祉にとって問題が無ければ面会交流を認める実務になっていますが、相手がモラハラ夫で妻に恐怖心がある場合、子がまだ乳幼児の場合など受け渡しや連絡が必要な場合、調停でどのような対応をするのか、慎重に判断していかなければなりません。
 弁護士には、裁判所に対して恐怖心を代弁してもらい、なるべく無理のない面会方法を模索していくことになります。

6 その他
 その他、弁護士には、子の監護者指定であったり、保護命令であったり、財産の保全であったり、様々なことを依頼することができます。
 まずは、今自分がどのような状況にあるのか、今後自分がどうしていきたいのかをしっかり考え、それを率直に弁護士に伝えて下さい。
 力量のある弁護士であれば、相談者の状況と今後の希望に応じた適切な手段の説明をしてくれるはずです。
 その弁護士に依頼を希望したいと思ったら、モラハラ問題はスピードも大事ですので、費用の説明を受けてすぐに依頼をして下さい。一方、別の弁護士さんにも相談してみたいと思ったら、そうしてください。
 相談に行ったから必ず依頼をしなければならないということはありません。まずはとにかく相談に行ってみましょう。 

モラハラ離婚の注意点

 モラハラ夫は親権にこだわることが多いです。
 同居中、育児に関心が無く、自己の趣味を優先してほとんど子どもと関わって来なかったにも関わらず、いざ離婚の話し合いになると、親権にこだわることが多いのがモラハラ夫です。
 モラハラ夫は、一般的に支配欲が強く、妻に親権を譲るということが心情的に許せません。また、実際に監護していないのに、親権だけは確保し、離婚後も母子と関わりを持って支配したいと考えます。
 親権は、簡単に言えば、子どもの生活に関する全ての事柄についての決定権です。離婚の際に親権を確保することは、極めて重要です。
 離婚を急ぐあまり、親権を譲ったり、親権と監護権を分け、親権者は夫、監護権は妻という変則的な解決は安易にしないようにしましょう。

モラハラ夫から調停には出ないと言われたら

 何の問題もありませんので、調停申し立てを行いましょう。
 モラハラ夫は、調停に出ないと言って、調停申し立てを思いとどまらせようとしていることが大半で、実際に調停申立がされて、裁判所から呼び出し状が届くと、意外とあっさり調停に出頭してきます。
 モラハラ夫の特徴ですが、外面はよく、社会的規範や権威には従うことが多いのです。
 調停に出頭して、自己を正当化する論理を滔々と述べるのですが、調停委員がそれに惑わされることはありません。
 もし、本当に出頭しない場合、裁判所から何度か出頭を促す連絡がなされ、事案によっては裁判所調査官が直接連絡をとって出頭を勧告することもあります。
 それでも出頭しない場合には、調停は不成立あるいは調停の取り下げを促されます。
 そのような場合には、離婚訴訟を起こすことになります。
 離婚裁判では、被告が欠席しても、原告の主張と提出された証拠に基づき、判決がなされます。
 モラハラ夫の「調停に出ない」という発言は、気にする必要はありませんので、淡々と手続を進めていくことになります。

別居後にモラハラ夫が押しかけてきたら

 弁護士に依頼することをお勧めします。
 弁護士に受任通知を送ってもらい、モラハラ夫との連絡の窓口になってもらいましょう。
 モラハラ夫からの直接の連絡(電話、メール、LINE等)は全て無視するか、「弁護士に全て任せているので弁護士に連絡してください」と端的に伝えます。
 家まで押しかけてきたときには、玄関の扉を開けてはいけません。
 どれだけ言っても帰らない場合には、警察に来てもらいましょう。警察に連絡するような事態になった事実自体が、その後の調停や訴訟で主張すべき有利な事実になります。

調停委員から裁判は大変だと言われたら

 裁判が大変なのは事実です。
 話し合いである調停と異なり、裁判では厳格な訴訟法の手続に則って、書面で主張・反論し、証拠で裏付けていく必要があります。
 また、訴訟となっても和解が進められることが多いのですが、和解が出来ない場合、判決に向けて、法廷で当事者双方の尋問が行われることになります。
 その準備には時間も労力もかかりますし、尋問期日には生々しい婚姻生活の詳細を語らなければなりません。
 もちろん、判決にはリスクがあり、必ずしも思い通りの判決が出るとは限りません。

 調停はある程度アバウトな手続と言えますが、裁判となると、弁護士に依頼する必要性が高くなりますので、弁護士費用の問題もあります。
 このようなことから、調停委員は、調停が大詰めになってきたときに、当事者に譲歩を促すために、このような訴訟の大変さを語ることがあります。
 しかし、訴訟を避けたい一心で安易にモラハラ夫の要求を飲んでしまうと、調停成立後、もっと大変なことになって後悔する場合もあります。
 ですから、このような場合には慎重に判断すべきで、弁護士に依頼している場合にはその弁護士が助言をしてくれるでしょうが、依頼しないでご自身で調停をしている場合には、一度弁護士に意見を聞いてみると良いかもしれません。

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