せっかく遺言を作っても、遺言の保管者・発見者が遺言内容を実現すればよいのですが、その遺言に不服な者が、それを勝手に破棄したり、隠したりするかもしれません。
また、遺言事項の中には、相続分の指定、遺産分割の禁止のように執行を要しないものもありますが、認知、遺贈、推定相続人の廃除又はその取り消しのように、遺言の内容を実現する行為を必要とするものがあります。この遺言内容を実現する行為を「遺言執行」といい、遺言執行を行うことを委託された者を遺言執行者と呼びます。
遺言の内容によっては、その遺言で遺言執行者を選任しておけば、検認が必要な遺言については検認の申立てが行われ、その遺言執行者によって遺言が確実に執行されることになります。
遺言を作成する場合は、遺言作成に関与した弁護士などを遺言執行者を選任しておくことをお勧めします。
当事務所の各種遺言作成サポートとあわせ、遺言執行者をご依頼いただくことも可能です。
当事務所では、個別の遺言の執行に関するご相談・ご依頼だけでなく、弁護士を遺言執行者に指定する場合のご相談やご依頼も承っております。
また、遺言を作成する際に、その遺言において遺言執行者を指定する場合だけでなく、相続開始後に遺言執行者を指定するという場合についてもご相談・ご依頼も承っております。
遺言の執行や遺言執行者の指定で弁護士をお探しの方は、遠慮なくご相談ください。
遺言執行者指定の弁護士報酬等の費用は以下のとおりです。
遺言執行者の手数料は、相続開始時に発生します。
手数料の金額は、相続財産の金額によって異なり、相続財産からお支払い頂くことになります。
経済的利益 | 手数料 |
---|---|
300万円以下の場合 | 330,000円 |
300万円を超え、3,000万円以下の場合 | 2%+264,000円 |
3,000万円を超える場合 | 1%+594,000円 |
※ 消費税込
※ 遺言の執行のために裁判手続きを要する場合には、上記手数料とは別に裁判手続きに関する弁護士報酬・実費等がかかります。
遺言執行者は、就任すると、相続人の調査、遺言書の検認の申立て、相続財産の調査・管理、財産目録の作成等を行わなければなりません。
その上で主に以下の事務を行います。
ア 認知
婚姻外の子を認知する遺言の場合、就任後10日以内に戸籍届出を行わなければなりません。
イ 廃除やその取消
推定相続人廃除やその取消しを内容とする遺言の場合、遺言執行者は、速やかに家庭裁判所に申立てを行わなければなりません。
ウ 財産の移転
遺言執行者は、遺言による不動産・有価証券等の引き渡しを行ったり、預貯金や有価証券の換価等を行い、受遺者や相続人に財産を移転します。
エ 不動産の名義移転
遺贈された不動産については、遺言執行者は登記義務者となり、受遺者との共同申請により登記名義の移転手続を行います。
オ 訴訟追行
遺産等に関する訴訟が提起された場合、遺言執行者が訴訟の当事者となる場合があります。
法律により遺言執行者が遺言の執行をしなければならないと定められている事項があります。
①認知(遺言者が遺言によって認知をした場合。遺言執行者は、その就職の日から10日以内に、認知に関する遺言の謄本を添付して、届出をしなければなりません(民法781条2項・戸籍法64条)。
②相続人の廃除(被相続人が遺言で推定相続人を廃除する意思を表示した場合。遺言執行者は、その遺言が効力を生じた後、遅滞なく家庭裁判所に廃除の請求をしなければなりません(民法893条前段)
③相続人の廃除の取消し(被相続人が遺言で推定相続人を廃除する意思表示を取り消したとき。遺言執行者は、その遺言が効力を生じた後、遅滞なく家庭裁判所に廃除の取消しをの請求をしなければなりません(民法894条2項・893条前段)。
未成年者、破産者は遺言執行者となることは出来ません(民法1009条)。
遺言執行は、身分関係・財産関係の重要な行為を伴い、相応の判断力や、財産管理能力が要求されることから、上記のような欠格事由が設けられています。
欠格事由の有無は、遺言者の死亡時を基準にして判断します。
したがって、例えば、遺言作成時には、未成年者を遺言執行者として指定していた場合でも、遺言者の死亡時にその者が成年に達していれば、欠格事由には該当せず、遺言執行者に就任することが出来ます。
遺言執行者は、委任とは異なり、一度就職を承諾した以上は、自己の意思で自由に辞任することはできません。
遺言執行者は、正当な事由があり、家庭裁判所が許可した場合に限り、辞任することができます。正当な事由とは、疾病、長期間の出張、遠隔地への引越し等、遺言執行が客観的に困難と認められる状態をいいます。
辞任を希望する遺言執行者は、相続開始地の家庭裁判所に対して辞任許可の審判を申し立てる必要があり、審判手続の中で正当な事由の有無が判断されます。申立ての管轄裁判所は、被相続人の相続開始地を管轄する家庭裁判所です。
辞任を許可する審判がなされた場合、相続人および受遺者に対し、辞任許可審判の謄本を添付のうえ、任務を終了する旨の通知を行います。
辞任に制限が設けられているのは、遺言執行者の任務の重要性に鑑み、一方的な辞任によって相続人に不測のの損害を与えないためです。
遺言執行者が任務を怠ったとき、その他正当な事由があるときは、利害関係人(相続人や受遺者等)が、遺言執行者の解任を家庭裁判所に請求することができます。
「任務を怠ったとき」の例としては、遺言執行者が相続人に対し、正当な理由なく相続財産の交付を怠った場合や、相続人からの請求があったにもかかわらず、事務処理状況の報告を怠った場合などが挙げられます。
「その他正当な事由」の例としては、一部の相続人のみに加担し、もはや公正な遺言の執行が期待できない場合や、病気等により円滑な遺言執行が期待できないような場合も含まれます。
遺言執行者が共同相続人の一人であるとか、遺言者の債権者又は債務者であるなど、遺言執行者が遺言執行に利害関係を有しているというだけでは解任事由にあたりません。
解任を希望する利害関係人は、相続開始地の家庭裁判所に対して解任の審判を申し立てる必要があり、審判手続の中で解任事由の有無が判断されます。
遺言執行には、時間や労力、法的知識を要する場面も多く、通常は、遺言執行者の職務の対価として報酬が支払われます。
遺言執行者に対する報酬は、 遺言に記載があれば、その内容に従います(民法1018条1項但書)。 遺言に記載がない場合には、相続人全員と遺言執行者との協議で決定することとなります。
協議が整わないときは、相続財産の状況、その他の事情(例えば、遺言執行行為の困難性・労力・費やした時間等)を考慮して家庭裁判所が決定します (民法1018条1項)。
弁護士を遺言執行者に指定する場合には、遺言に報酬について定めておくのが一般的です。各弁護士は報酬規程を準備していますので、事前に確認しておきましょう。
なお、家庭裁判所による報酬付与の審判は、遺言執行者の報酬額を定めるだけで、執行力はありません。相続人が支払わない場合、訴訟を提起するほかありません。
遺言の作成・執行業務は、従来は弁護士のみが行っていた分野でしたが、近時は信託銀行も積極的に力を入れている分野です。
しかしながら、信託銀行は法律の専門家ではありませんので、対応できる範囲にも自ずと限界がありますし、相続人同士で紛争が生じた場合には対応できません。
従って、紛争が生じた案件は、信託銀行から弁護士を紹介されることになり、費用も重複してかかることになります。
これに対し弁護士は、財産に関すること、身分に関することも含めて、相続に関する全ての事柄を取り扱うことができ、紛争が生じないようにする予防的な仕事を含め、相続に関するサービスをワンストップで提供することができる点で大きなメリットがあるといえます。
当事務所は、年間200~300件超のお問合せ・法律相談実施実績、常時相当数のご依頼を頂いております。お気軽にお問合せ下さい。
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