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神戸の弁護士が財産分与を解説します!

 財産分与は、離婚の際に、夫婦が婚姻中に形成した財産を清算することをいいます。
 まずは、基本的な知識を身に着けてから話し合いに望むようにしましょう。

離婚時の財産分与のポイント

 離婚時の財産分与とは、離婚の際に、夫婦が婚姻期間中に協力して築いた財産をどう分けるのかという問題です(清算的財産分与)。

 財産分与を検討する際の重要なポイントは以下の3点です。

1 対象となる夫婦それぞれの財産を特定する

2 いつの時点の財産を分けるのかを決める

3 その財産をどのように分けるのか(割合・方法)を決める

 以下に記載する事柄は、上の3つのどの局面なのかを考えながらお読みください。

財産分与の対象となる財産

 財産分与の対象となる財産は、以下のようなものです。これらのうち、夫婦で婚姻後に協力して形成した財産が対象となります。

  • 現金
  • 預貯金
  • 財形貯蓄
  • 不動産
  • 株式等の有価証券
  • 生命保険(積み立て型)
  • 学資保険
  • 自動車
  • 退職金
  • 小規模企業共済
  • 家財道具
  • 自営業者の場合の事業用財産

 借金等の負債は、プラスの財産から控除して検討されます。
 実務では、夫婦どちら名義の負債で、離婚後の支払義務をどちらが負うのかを考慮して検討します。

 保険は、被保険者ではなく、契約者名義がどちらになっているかを確認します。

 事業用財産は、個人事業の場合には分与対象となりますが、法人名義の財産は分与対象とはなりません。
 但し、当該法人の株式や出資金は分与対象となります。

財産分与の対象とならない財産(特有財産)

財産分与の対象とならない財産としては、以下のようなものが挙げられます。

1 夫婦の一方が婚姻前から有していた財産で家計と混同していないもの

2 婚姻後に親から相続した財産や贈与を受けた財産

 このような財産を「特有財産」と呼んでいます。

 結婚前から不動産や自動車を所有していたとしても、結婚後にローンの支払いをしていた場合には、結婚後のローン支払い相当分は分与の対象となります。

夫婦の財産をどのように分けるか(2分の1ルール)

 具体的な財産の分け方、比率については法律に定められている訳ではありません。

 夫婦が話し合いにより、双方が納得できる分け方を模索していくことになります。
 
 現物で分け合うこともできますし、現金化して分け合っても構いません。どちらかが取得し、代償金を支払うという解決もあります。

 清算の割合については、通常は、夫婦の財産を作り上げた各自の貢献度に応じて決めることになります。特段の事情が無い限り、貢献度は等しいとして50%とされることが一般的です(2分の1ルール)。

【具体的な注意点】

1 現物で分ける場合、不動産、自動車など、所有者名義の変更が必要になる財産は、名義を確認し、名義変更に必要な書類を確実に受け取っておきましょう。

2 換金するなどして現金で分ける場合は、できるだけ一括払いにするようにしましょう。分割払いの場合、離支払う側の経済力、支払意思に変化が生じ、支払いが滞る場合が多いからです。どうしても分割払いにせざるを得ない場合、初回の支払額を多くしたり、期間もなるべく短く設定しておくようにしましょう。

3 協議離婚の場合、財産分与の合意ができたとしても、そのままでは記録に残りませんので、後に合意内容について紛争が生じる場合があります。
 従って、協議離婚の場合は、合意内容を必ず双方が署名捺印した離婚協議書又は公正証書などの書面を作成しておくようにしましょう。

4 分割払いを認める合意をする場合には、万一支払われなくなった場合に備えて、可能な限り、強制執行認諾文言付きの公正証書を作成しておきましょう。そうしておけば、仮に相手が支払わなくなった場合に、裁判をせずに相手の財産(預貯金や給料など)を差し押さえることができます。

財産分与の2分の1ルールの例外・修正

 2分の1ルールは、実務的には確立されたルールとなっています。

 しかし、このルールは絶対的なものではなく、特段の事情が認められる場合には、例外・修正が認められる場合があります。

 たとえば、
1 夫又は妻が芸術家・発明家・プロスポーツ選手等、特別な才能や能力を有していることで高額の収入を得ている場合、
2 医師等の高度な専門職として高収入を得ている場合、
 これらの場合は、専門家となるための資格や専門技術を、婚姻前に時間と費用、労力をかけて身に着けたといえます。

 専門家となった後に婚姻した場合、他方配偶者がこれらの資格や専門技術の取得に寄与していないといえますし、夫または妻が芸術家として成功している場合、その配偶者は、特殊な才能やセンスの形成に寄与しているとはいえないからです。

 このような場合、2分の1ルールの例外を主張する側が、資格や専門的技術を婚姻前に習得したこと、その習得のために個人として相当な努力と費用をかけたこと、その才能が特異なものであることなどを具体的に述べ、婚姻後の財産形成に他方配偶者の寄与が無い又は少ないことを、特段の事情として個別に主張・立証することになります。

 例外を認めるべきではないと主張する側は、その技能や技術の習得が困難ではないこと、その才能等は特異なものではないこと、特異なものであっても、技能等を有する配偶者が収入を挙げられるのは、配偶者が援助したからであることなどを主張し、反論していくことになります。

6 財産分与で負債はどのように処理すべき?

 財産分与について、プラスの財産は分かりやすいですが、マイナスの財産、すなわち「借金」はどのように処理すべきでしょうか。

結論からいいますと、借金の性質やプラスの財産との兼ね合いで処理方法が変わってきます。

子ども名義の預貯金は財産分与の対象?

 子どもが生まれると、子ども名義で預金口座を開設し、将来の教育資金等のために夫婦の収入を原資として貯蓄をするケースがよく見られます。

 離婚の際の話し合いにより、子ども名義の預金は子どものもの、として財産分与の対象から外し、離婚後に親権者となる側の管理に委ねることは勿論可能です。

 しかしながら、話し合いにより解決出来ない場合、それまでの子ども名義の預貯金の管理(通帳・カード・銀行印・入出金管理等)を親が行っていたのであれば、当該口座の預貯金が子どもに帰属している(子ども固有の財産)と評価することは難しく、夫婦の実質的共有財産として、財産分与の対象となります。

 逆に、子どもが一定の年齢に達しており、既に子どもに管理している場合には、原資が夫婦の収入であったとしても、子ども固有の財産として、分与の対象とはなりません。

 また、子ども名義の預貯金の原資が夫婦の収入ではなく、親族等から受領した出産祝い金、お年玉、子ども自身が得たアルバイト代等であれば、それは当然子どもの固有の財産として分与の対象とはなりません。

財産分与で将来の退職金はどう処理する?

「財産分与は、今ある財産を半々で分けることは分かった。」

「じゃあ、まだ受け取っていない数年後に支払われる退職金はどうしたらいいの?受け取る側だけが得をするの?」

 近年増加傾向にある、いわゆる「熟年離婚」の際にとくに問題になるのが退職金の取り扱いです。

事業用の財産の財産分与

 夫婦の一方当事者が個人事業を営んでいる場合、又は夫婦共同で事業を営んでいる場合、その事業に関して購入した一方の名義の事業用財産も、婚姻期間中に購入したものは、原則として実質的共有財産として、財産分与の対象となります。

 もっとも、当該事業用財産が相続したものであるとか、相続したものを換価して得たものである場合には、分与の対象となりません。

財産分与の基準時(いつの時点の財産を分けるのか)

 離婚に先立って別居をするケースが多く、別居後離婚が成立するまでの間に財産の内容が変動したような場合、どの時点の財産を基準として決定すべきでしょうか。

 財産分与は、夫婦が婚姻生活中に共同で形成した財産をどう分けるのかという問題ですから、実務では、財産分与の基準時は、原則として、経済的な共同生活が消滅した時点、すなわち、別居時とされています。

 もっとも、個々のケースで別居後の変動を一切検討しないことが公平を欠くような場合には、別居後の財産の変動についても、「一切の事情」(民法768条3項)として考慮することがあります。

 したがって、別居時の財産を正確に把握したうえで、別居後の変動の有無、変動がある場合にはその内容や原因を検討し、別居時を基準とすることが公平にかなうかどうか、修正が必要かを念のため検証する必要があります。

 夫婦の一方当事者が個人事業を営んでいる場合、又は夫婦共同で事業を営んでいる場合、その事業に関して購入した一方の名義の事業用財産も、婚姻期間中に購入したものは、原則として実質的共有財産として、財産分与の対象となります。

財産分与の原則的な算定方法

 財産分与の算定は、まず、別居時の夫婦名義の財産を確定し、そこから双方の特有財産を控除します。

 夫婦名義の財産から特有財産を控除した残額が、実質的夫婦共有財産として分与の対象となります。

 財産分与は、婚姻後に形成した積極財産(プラスの財産)を清算する制度です。積極財産がなく、消極財産(マイナスの財産・負債)があるだけという場合や、積極財産から消極財産を控除した結果マイナスとなる場合には、財産分与請求権は生じません。

 すなわち、積極財産から消極財産を控除した結果、積極財産が残存する場合に限り、財産分与請求権があるとして、2分の1ルールをベースに分与額を算定します。

 ただし、負債超過の場合でも、積極財産の帰属について話し合い、取り決めを行うことはもちろん可能です。

財産分与の対象財産の評価の基準日

 対象財産が確定したとしても、別居時から離婚成立までに時間が掛かる場合、対象財産の評価額が変動する場合があります(例えば、上場株式、不動産等)。

 この場合、対象財産の評価は、離婚時を基準とします。財産分与は、夫婦が離婚する場合の共有財産の清算の問題だからです。

 つまり、どれが分与の対象財産かについては別居時を基準に確定し、確定された対象財産の評価は離婚時を基準日として行うということになります。

財産分与の概算額の確認

 別居時を基準に対象財産が確定すると、評価の問題が残るものの(評価は離婚時基準)、おおよその財産分与額を確認することが出来るようになります。

 夫婦それぞれの財産を合計し、2分の1相当の額が幾らになるのかを確認します。

 夫名義財産が500万円、妻名義財産が300万円という場合、分与対象となる夫婦共有財産は500万円+300万円=800万円であり、その2分の1相当額は400万円となります。

 妻は自分名義の財産が300万円ありますので、400万円との差額である100万円を夫に財産分与として請求できることになります。

 100万円は現金で請求することはもちろん、保険や車両の名義変更等で精算しても構いません。

財産分与の請求方法

 民法では、「協議上の離婚をした者の一方は相手方に対して財産の分与を請求することができる」とされています(768条1項)。

 「離婚をした」と規定されていますが、離婚を(これから)する際に相手に財産分与の請求をして、離婚届の提出と引き換えに、金銭を受領するなど、約束の履行を確保するようにしましょう。

 離婚届が提出され、離婚が成立してしまうと、財産分与の約束が守ってもらえず、トラブルになることが多いからです。

 財産分与の内容は、当事者で話し合いにより決めるのが原則ですが、話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所に財産分与の調停を申し立てたり、離婚調停を申立て、その調停の中で財産分与の話し合いを行なうことになります。

  既に離婚が成立してしまっている場合であっても調停や審判の申立をすることができますが、離婚成立後、2年以内にしなれければなりません。

財産分与の請求期限(財産分与の時効)

 離婚をする際、必ず財産分与の合意が必要という訳ではありませんので、離婚の成立を優先して財産分与の話し合いを後回しにするケースもあります。

 財産分与は離婚後、いつまで請求できるのでしょうか。
 いつまで経っても請求できるとすると、お互いに安心して新しい生活を営むことが出来ませんよね。

 財産分与請求権の請求期限(時効)は離婚から2年です。
 離婚の際に財産分与の話し合いを後回しにした場合には、注意が必要です。

相手が財産分与に応じない場合の対応策

 早く離婚したいのに、相手が財産分与に応じない、財産を開示しないということは、実は意外とよくあります。

 早く離婚したい場合、財産を隠されると頭に来ますよね。

 相手が財産分与に応じない場合、どのような対応が考えられるのかというご相談をよく受けます。
 このような場合は、速やかに弁護士に依頼して調停申し立てを行い、調停手続の中で開示を求めたり、弁護士を通じて照会・調査嘱託等により相手の財産の情報の獲得を目指すことになります。

財産分与の調停・審判

 財産分与の合意をせずに離婚を先に成立させることも可能です。

 離婚後に財産分与の話し合いを行っても解決できない場合、家庭裁判所に審判の申立てをすることができますが、通常はまず財産分与調停申立を行います。

 調停が不成立となれば、審判となります。家庭裁判所は、審判手続で財産分与の要否、分与の額及び方法等を定めます。

 審判が金銭の支払い、物の引き渡し、登記義務の履行など給付を命じるものであれば、執行力ある債務名義と同一の効力があり、相手が任意に審判の内容を履行しない場合、強制執行が可能となります。

 なお、調停で双方が合意し、合意した内容が調書に記載されると調停が成立します。成立した調停は、確定した審判と同一の効力を有します(家事法268条1項)。

財産分与の交渉を有利に進めるポイント

 財産分与を有利に進めるためには、

  1. 相手方配偶者の財産を漏れなく把握すること
  2. 自身の特有財産の立証資料を準備すること

​ が、重要となります。

 配偶者名義の財産が多ければ多いほど、財産分与として請求できる金額が大きくなり、自身の特有財産が多ければ多いほど、相手に渡さなければならない金額が小さくなるからです。

 したがって、近い将来、離婚を検討されている方は、同居しているうちに、相手方配偶者の財産のコピーを取ったり、郵便物をチェックする(銀行、証券会社、保険会社等からの郵便物)などして、配偶者の財産の把握をしておくことをお勧めします。

 見落とされやすいものとしては、保険、財形貯蓄、小規模共済、ネット銀行及びネット証券会社の残高、相手方配偶者が経営している会社の株式等があげられます。

 通帳、給与明細は、最低でも過去1年分は確認し、見落としが無いかチェックするようにしましょう。

 残高や内容が分からなくても、どこの保険会社、どこの銀行に口座があるかが分かれば、裁判所の調査嘱託を申し立てるなどして調査することが可能となる場合があります。

 全く手がかりが無い場合、弁護士でも見つけることは困難です。

 自身の特有財産の立証資料については、婚姻期間が長ければ長いほど、資料の再取得が難しくなります(銀行の保存期間は一般に10年と言われています)。

 婚姻時の預金残高から現在まで紐づけができるかどうか、贈与、相続を受けた際の資料(税の申告書、契約書等)が残っているかどうか、確認してみましょう。

 特有財産については、特有財産であると主張する側に立証責任がありますので、証拠が無ければ配偶者があなたの特有財産と認めない限り、夫婦共有財産と推定されてしまいます。

財産分与で考慮されにくい事情

 財産分与の論点(調停)で、以下のような主張がされることがありますが、あまり考慮されることはありません。

1 相手方配偶者が浪費したから財産が少ししか残っていない。だから自分が全部取得すべき

2 相手方配偶者は不貞行為を行ったのだから、財産分与を受ける資格はない

 1に関しては、「浪費」の基準がそもそも不明確(生活水準によって様々)であるうえ、浪費の立証が困難だからです。

 共同生活を営んでいた以上、浪費をやめさせる努力をどこまでしていたか、費消行為を容認・放置していたのではないか、といった点も問題になります。

 相手方から1のような主張が出てきた場合、おおまかな家計収支を説明し、浪費とまではいえないこと、必要な出費であったことなどの理解を求めるようにしましょう。

 2に関しては、財産分与の論点ではなく、慰謝料の論点で話し合われます。財産分与は夫婦共有財産の清算の問題ですので、離婚原因・有責性の問題とは別に、分与を受ける権利は認められるのが通常です。

財産分与で相手の財産がもっとあると主張したい

 夫婦間の財産は、当事者が自分で財産分与の対象となる財産が存在することを主張し、資料を提出しなければなりません。

 調停等でよく見かける主張は、毎月の収入と支出を提示し、これだけ差額があるのだから、どこかに財産を隠しているはず、というものです。

 しかし、裁判所は仮定や推論の主張は、まず考慮してくれません。

 また、家庭裁判所が何の手がかりもないまま、対象財産を探してくれることはありません。

 相手も、根拠のない主張は取り合ってくれません。

 従って、相手にもっと財産があるはずだと主張するのであれば、どのような財産があるのかを具体的に説明し、資料を提出しなければなりません。

 それができない場合、真実はどうであるかはともかくとして、判明している財産だけを財産分与の対象とすることにならざるをえません。

別居時に配偶者が持ち出した財産の取扱い

 離婚に先立ち、夫婦の一方が自宅を出て別居するケースは多くみられます。

 その際、出ていく側が夫婦の実質的共有財産を持ち出すことがあります。

 よくあるのは、夫婦の一方が他方名義の預金通帳を持ち出して(例えば、妻が夫名義の通帳を持ち出す)費消してしまい、実際に財産分与を行う離婚時に大きく目減りしているようなケースです。

 このような場合、持ち出した財産の内容、費消した額が特定できれば、基準時(上述のとおり別居時)時点で存在した財産を分与対象財産として取り扱うことになります。

 持ち出した側が相手から婚姻費用の支払いを受けていないような場合、費消額について、未払いの婚姻費用の精算と関連させて解決する場合もあります(未払いの婚姻費用が50万円、費消金額が30万円である場合、20万円を未払い婚姻費用と扱うなどの解決)。

 また、例えば夫が妻に家計管理の一切を任せており、自身及び妻の預金、有価証券、保険契約等について、どこに何があるか全く知らないというケースも多々見られます。

 このような場合、妻に財産を隠されてしまうと、弁護士に依頼しても全てを確実に確認することは出来ません。

 このような事態にならないよう、離婚を考え始めたなら、最低限自分名義の、出来れば妻の分も含め、預貯金や有価証券等がどこの金融機関にあるのかは、定期的に確認しておくことが重要です。

 別居した妻が、別居後、夫名義の通帳やキャッシュカードを返却しない場合、金融機関にキャッシュカード等の紛失届を提出し、払い出しが出来ないようにすると言った対応が必要な場合もあります。

配偶者が財産隠しをする可能性がある場合

 離婚の際には慰謝料や財産分与の話し合いとなりますが、分与をしなければならない側が、財産を隠そうとすることがあります。

 具体的には、自分名義の預金を相手に知られていない別の金融機関に移したり、現金化して隠したりなどの行為が考えられます。

 財産隠しを許し、相手方の財産の内容(額)及び存在(場所)がわからなくなりますと、交渉は不利となり、実質的に公平な解決が出来なくなります。

 配偶者が財産隠しを行う可能性がある場合には、事前に保全を行うことも検討しましょう。

 まず、財産分与として、金銭の請求をしようと考えている場合には、相手方の財産(預金口座等)について、裁判所に仮差押命令の申立てをすることを検討します。もっとも、仮差押命令を裁判所に出してもらうためには、一定額の担保を立てることが必要です。

 相手方名義の不動産を取得したいと考えている場合には、裁判所に処分禁止の仮処分の申立てをし、相手方が名義移転等の処分行為をすることを禁ずる決定を出してもらうことを検討します。

 この決定が出れば、相手方が名義移転しても、移転を受けた者は申立人に対して、自分が所有者であることを主張することができなくなります。もっとも、上記の仮処分の場合と同様、
担保を立てることが必要です。

 上に述べた2つの申立ては、一般の方が自身で行うのは困難ですので、早急に弁護士に相談するようにしましょう。ただ、実務的にはこれらの保全を行うケースは多くはありません。

 上述の保全処分を行うと、相手方が感情を害し、紛争が紛糾することがあります。相手の性格等を踏まえ、慎重に判断することも重要です。

住宅ローンが残っている自宅の財産分与

 まず、住宅ローンの残債務額が家の価値より高い不動産(オーバーローンの不動産)については、残債務を自己資金で弁済するか他の銀行等から借り換えをしない限り、現在の住宅ローン債権者(銀行)は、担保(抵当権)を抹消することに同意してくれません。

 同意が得られない以上、通常は売却が出来ません。

 ですので、現在の名義人がそのまま名義を維持しながらローンを支払っていく(夫単独名義のローンなら夫が支払いを継続する)のが原則となります。

 夫名義の住宅を妻名義に財産分与を原因として名義変更し、妻がそのままそれまでの家に住み続けるということで、財産分与の話がまとまる場合があります。

 住宅ローンが完済されていれば問題はありませんが、住宅ローン及び抵当権の登記が残っている場合は慎重に検討する必要があります。

 
住宅ローンを完済しないまま、所有名義だけ妻名義に変更し、妻が居住継続することも事実上は可能ですが、抵当権が残っていますので、妻が夫の住宅ローンのために家を担保として差し入れているのと同じことになります。

 
住宅ローン債権者との契約で、夫婦間であっても、離婚時でもローン完済前は名義変更が禁じられている場合もあります(名義変更が銀行との関係で契約違反となる可能性があります)。

 
離婚の際には、住宅ローンの名義人となっている一方配偶者が住宅ローンを継続して支払っていく、他方が住み続ける、という内容の話し合いが持たれることが多いと思われます。

 諸事情によりローンの支払をしなくなると、抵当権者が家を競売にかけることになります。
 他方配偶者は家の所有権を失い、立ち退きの必要が生じます。

 
抵当権を抹消せずに名義だけを変える場合は、上記のようなリスクがあることを前提に、夫の将来の支払能力、約束を守ることが期待できるか、等を十分に検討しておく必要があります。


 次に、住宅ローンの残債務より家の時価の方が高い場合(余剰がある場合)、家の価値は、時価から住宅ローンの残債務を引いたものとなります。


 財産分与の方法としては、

1 家の価値の一定割合(余剰の半額相当)を、住宅ローンを支払いその家に住み続ける一方配偶者から出て行く他方配偶者へ金銭により支払う方法、

2 家を売却して住宅ローンを完済し、余剰を分ける方法、

3 住宅ローン債権者の承諾を得て債務者変更の手続をとり、居住を継続する方法等が考えられます。

 住宅の評価額より残債務額の方が大きければ(オーバーローン)、財産分与請求権は発生しません。もっとも、住宅以外に財産があれば、これを住宅の価値に加算して計算を行います。

 なお、オーバーローンで財産分与請求権が発生しない場合でも、住宅ローンは夫婦が婚姻共同生活を営むために負担した債務ですので、夫婦で分担割合を協議しなければなりません。

 但し、これは夫婦内部の問題で、住宅ローン債権者に対する関係では、ローンの名義人が弁済義務を負います。

 別居後、夫または妻が住宅ローンを弁済していた場合には、離婚時の住宅の評価額から、別居時点の残ローン額を控除して検討します。

 別居後の住宅ローンの減少には、他方の夫または妻の寄与・貢献がないため、離婚時のローン残額ではなく、別居時のローン残額を控除するのです。



 夫婦が連帯債務・一方が連帯保証人になっている場合、住宅を取得しない方は、連帯債務・保証人から抜けたい、と思うのが通常だと思われます。

 しかしながら、連帯債務・連帯保証となっているのは、借り入れの際に単独では審査が通らないといった事情から連帯債務・連帯保証となっていることが多いと思われます。

 離婚するからといって金融機関が連帯債務・保証債務を免除してくれるということは基本的にありません。
 これを踏まえて住居をどのように処理するのかを検討する必要があります。

 住宅を取得する側の配偶者が、「離婚する相手方(配偶者)のために、連帯債務・連帯保証債務を免責してもらえるよう、金融機関と交渉することを約束する」などとして調停がまとまる場合があります。

 これは、事前に金融機関に確認を取り、他の保証人を入れるなどある程度見通しが立っている場合に入れるのが相当な条項であると考えます。

財産分与と税金

 財産分与による財産の取得について、一般的には贈与税は課されません。

 実質的な共有財産の清算に過ぎませんので当然と言えます。

 但し、分与の額が過当であると認められる場合には、当該過当部分が贈与税の課税対象となります。

 また、離婚を手段として贈与税や相続税を免れようとしたと認められる場合には、贈与税が課税されることがあります。

 財産分与として資産を譲渡した側には、譲渡所得税が課せられる場合があります。

 多額の譲渡所得税が課せられることを念頭に置かずに財産分与を含む離婚を成立させてしまい、後に予想外の課税がされて「こんな筈では無かった」ということにならないよう、譲渡所得が発生するのかどうか(取得時の価額と現在の価額の差はどうなっているか)については、念のため検討しておくようにしましょう。

不動産の財産分与で注意すべき税金

 離婚の前後で、それまで夫婦で住んでいた不動産の名義を夫から妻へ変更し、夫が家を出て妻が住み続ける、というケースはよくあります。
 
 離婚時に不動産を譲渡する場合、タイミングについては慎重に検討するようにしましょう。

 譲渡を行うのが離婚が成立する前なのか後なのかによって、課税される税金が変わってくる場合があります。

1 夫婦間の贈与は贈与税が課税(原則)
 夫婦間の財産の譲渡であっても、扶養義務の範囲内と認められないものは贈与税の課税対象となります。
 婚姻中、不動産の名義変更を行う場合、通常は基礎控除の110万円を超えますので、贈与税が課税されます。

2 夫婦間の贈与でも、配偶者控除が使える場合には、贈与税は非課税
 夫婦間の譲渡でも、以下の要件を満たしていれば、2,000万円まで非課税となります。

【配偶者控除の適用要件】
・婚姻期間が20年以上であること
・居住用不動産または居住用不動産を取得するための金銭の贈与であること
贈与の翌年の3月15日までに不動産に居住し、引き続き居住する見込みであること

 離婚前の自宅不動産の譲渡を行っても、基礎控除額と合算して、不動産の価格が2,110万までなら贈与税はかからないことになります。

 なお、配偶者控除を受けて税金を支払わなくてよくなる場合でも、贈与税の申告は必要です。

3 配偶者控除が使える場合でも、不動産取得税は課税
 離婚前の贈与の場合、2の配偶者控除により贈与税が非課税になっても、譲渡を受ける側は、不動産取得税がかかります。

 不動産取得税の税率は固定資産評価額の4%ですが、現在は、土地と居住用家屋については3%とする軽減措置が設けられています。

 財産分与として離婚後に不動産譲渡を行った場合には、不動産取得税は原則として課税されません。

 離婚時に夫婦間で不動産譲渡を行う場合には、配偶者控除の要件をみたしている場合でも、離婚後に財産分与として譲渡する方が少し節税になるということになります。

4 財産分与として不動産を譲渡する場合は、離婚後に登記申請
 
財産分与として不動産を譲渡する場合には、離婚後、離婚が戸籍反映された後に名義変更手続きをする必要があります。

 財産分与は、離婚が成立しなければ効果が生じないからです。

 離婚前には財産分与を原因とする所有権移転登記はできません。

 ここは、意外と弁護士でも勘違いしている人がいます(「調停成立前に期日間で先に移転登記してしまいましょう」とか。無理です。)。
 なお、離婚前に譲渡の手続きをすれば上述の贈与となってしまいます。

5 譲渡をする側には譲渡所得税が課税される場合がある
 
不動産の価格が購入時よりも上がっている場合には、譲渡所得税が課税される場合があります。課税の基準となる課税譲渡所得は、次の計算式で計算します。

 課税譲渡所得=譲渡価額-(取得費(原価、諸費用)+譲渡費用)

 但し、居住していた不動産を譲渡(財産分与)する場合には、3000万円の特別控除の適用があります。

 また、分与する居住用不動産の所有期間が10年を超える場合には、軽減税率の適用があります。

6 登録免許税・固定資産税
 名義変更の登記の際には、登録免許税がかかります。登録免許税は、贈与の場合でも財産分与の場合でも、固定資産評価額の2%です。

 どちらが負担するのかは協議によりますが、通常は取得側が全額負担することが多いのではないかと思われます。

 
所有者になれば、毎年固定資産税を支払う必要があります。納税通知書は、1月1日現在の不動産の所有者に送付されます。

 
譲渡した年度分の固定資産税の負担について、離婚協議で定めることも出来ます。但し実際に納付するのは、元の所有者ですので計算して清算することになります。

扶養的財産分与

 財産分与には、以上に述べた清算的財産分与のほか、「扶養的財産分与」と呼ばれるものがあり、調停でも時折これを求める主張が見られます。

 しかし、離婚は、それが成立することにより他人となり、相互の扶養義務が無くなるのですから、本来は認められるものではありません。

 実務的には、離婚後の生活費を見てあげないと、余りにも気の毒で、公平や信義に反するといった特殊な場合にのみ認められるものです。

 高齢であったり障がいをもっている一方配偶者に対し、他方配偶者は高収入が見込まれ、愛人と暮らしている、というような場合です。

 離婚後の生活について経済的な不安があるというだけで扶養的財産分与を求めても、容易に認められるものではありません。

内縁関係の場合の財産分与

 内縁とは、婚姻の届出はしていないものの、当事者間に社会通念上の婚姻意思があり、継続的に共同生活を営んでいる男女の関係をいいます。

 民法768条は、法律上の婚姻関係にある夫婦の離婚に伴う財産分与についての規定ですが、実務では、内縁関係の解消に際しても、同条を類推適用し、財産分与を認めています。

 したがって、内縁解消の場合であっても、内縁関係継続中に両当事者の協力のもとに形成された財産が存在する場合には、財産分与の請求をすることが出来ます。

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弁護士:須山幸一郎

兵庫県弁護士会所属
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