最近、配偶者が子を連れて勝手に出て行った(子連れ別居)、面会交流を実施したら子を約束通り返してくれなかった(面会交流の約束違反)、子どもと暮らしていたら、配偶者に子どもを勝手に連れ去られた(連れ去り)というご相談が増えています。
多くのウェブサイトや書籍などで、親権争いになった際には、「子の監護実績を積んでいる方が有利である」と記載されていることもあり、親権争いの前哨戦として、子の監護が争われるケースが増えています。
相手に子を連れ去られたときの対応策として、子の監護者指定・子の引渡しの審判申立て、併せて審判前の保全処分(子の引渡し)が挙げられます。
しかし、実際にこれらの類型の事件を受任してくれる弁護士を見つけるのは大変です。
これらの類型の事件は特殊な分野で、経験が少ない(又は経験が一度も無い)弁護士が圧倒的に多いからです。
しかも対応にスピードが要求されるため、優秀な弁護士に出会えたとしても、その弁護士が既に受けている仕事に優先して対応できる状態ではないことも多いでしょう。
また、後述するように、子が連れ去られた場合、子の居場所を管轄する裁判所が実際に手続を行う裁判所となり、通常は、その裁判所に出頭しなければなりません。
出張費用もかかりますので、時間と費用がネックとなります。
したがって、まず、これらの類型の事件は、弁護士を探すのが意外と大変だということを頭に入れておきましょう。
一方配偶者が他方配偶者に子どもを連れ去られた場合、緊急に子の引き渡しを求めるための手段を検討することになります。
具体的には、家庭裁判所に対する子の監護に関する処分(子の監護者指定・子の引渡し審判)を本案とする審判前の保全処分(仮の決定を得て子を取り戻す)を申し立てます。
1 申立権者
申立権者は、子の父母です。祖父母も申立権者に含まれると解されていますが、実際に申立人の多くは父母のいずれかです。
2 申立ての要件
審判前の保全処分を申し立てるためには、審判又は調停が係属していなければなりません。通常は本案の審判と同時に申し立てます。
3 保全を求める理由
申立書には、「保全の趣旨」と「保全処分を求める事由」を記載します。
「保全処分を求める事由」は、
①本案が認容される蓋然性
②保全の必要性
を記載します。これらは「疎明」しなければなりません。
4 保全が認められたら
保全が認められたら、すぐに強制執行をすることが出来ます。但し、受け取って2週間以内という期間制限があります。
上のとおり、保全処分を申し立てる事由として、「本案が認容される蓋然性」を疎明しなければなりません。
本案が認容される蓋然性は、本案の審判において、申立人側の子の監護者指定、子の引渡しが認められる蓋然性をいいます。
本案では、
① これまでの監護の状況
② 現在の監護の状況
③ 監護補助者の監護能力
④ 子どもの年齢・意思
⑤ 子どもの心身の状況(健康状態)
⑥ 子どもの環境への適応状況
⑦ 子どもと両親との関係性
⑧ 通学・通院(持病や疾患がある場合など)の状況
⑨ 現在の状況(子ども奪取)に至るまでの具体的経過
などが総合考慮されて判断がなされます。
審判前の保全処分でも、基本的には同様の要素を検討します。
法律相談では、見通しについてよく聞かれますが、置かれている状況は事案によって様々で、実際に申し立てをして、相手方の反論や子の状況を確認しなければ回答することは難しいといえます。
これまで数多く関わってきた経験からすると、どの要素も重要ですが、特に
①(主たる監護者がいずれであったか)、
⑤(子どもの心身の状況、健康状態)、
⑨(違法な連れ去りと評価できるか否か)
は特に重点的にチェックされているように感じています。
上のとおり、保全処分を申し立てる事由として、「保全の必要性」を疎明しなければなりません。
保全の必要性については、「子その他の利害関係人の急迫の危険を防止するために必要があるとき」と規定されています(家事法157条1項3号)。
具体的には、
① 監護親について、虐待やネグレクト等、子の生活に危険が伴う態度が認められる場合、
② 現在の環境に起因して子が情緒不安定に陥っている場合、
③ 別居後に一方の親の下で監護されていた子を他方の親が実力行使で連れ去った場合
など、監護開始の悪質性が認められる場合などに、保全の必要性が認められやすい傾向にあると言われています。
裁判所に申立書を提出すると、保全事件という特殊性から、迅速な審理、迅速な審判がなされます。
できるだけ早い時期に、審判期日が指定され、双方が期日に出席し、裁判官により、争点整理的な審問がなされます。
審問には、調査官が立ち会うことが通常です。
緊急性の有無、調査官関与の要否、調査の時期・方法が検討されます。
また、子が15歳以上の場合は、子の陳述を聴かなければならないことになっています。
(もっとも15歳以上の場合は、子は自分の意思で居所を選択できる場合が多いでしょうから、ケースとしては多くありません)
したがって、申立書を提出すると、近い時期に裁判所に出向くことになり、調査官調査が行われる場合には、誠実に対応しなければならないということは頭に入れておく必要があります。
弁護士に依頼しておくと、この審判期日に同席してもらうことが出来ます。
裁判所は、保全処分と本案の判断が異なることにより、子どもが両親の間を行ったり来たりすることは避けるべきであると考えており、保全(仮の処分)とはいえ慎重に判断します。
したがって、審判前の保全処分と言いながら、本案に先行して判断がなされず、本案と同時に判断がなされることも珍しくありません。
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