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遺言の教科書

遺言のすすめ

 遺言を作り、意思を明確にしておくことで、遺された相続人の相続手続をスムーズに行うことができるようになります。  
 また、遺産をめぐる相続人間の紛争を未然に防止することができます。
 
遺言は、円満な相続のための大変有効なツールとなります。

 ご相談にいらっしゃる相続人(遺産分割の依頼者)の方も、「遺言さえ作っておいてくれれば、こんな思いをする必要もなかったし、お金も時間もかからなかったのに。。」とおっしゃることが大半です。

 最近、「エンディングノート」が流行っていますが、エンディングノートは遺言ではありません。エンディングノートを作成することを否定はしませんが、せっかくでしたら、この際、ぜひ、遺言を作成しておくことをお勧め致します。


 法定相続人による遺産分割協議が不要になる(紛争予防)

 「遺言しておくほどの遺産は無い」「私の子供たちなら大丈夫だろう」とか、「親族は皆、仲がよいので遺言書など書く必要はない」などという方は多くいらっしゃいます。

 しかしながら、いざ相続が開始すると、相続人(又は相続に関係のない「相続人の配偶者」)から権利が主張され、争いとなることが多いのです。

 戦前は家督相続といって、長男が全財産を相続するというのが原則でしたので、相続争いというものは基本的にはほとんどありませんでした。
 しかし、戦後、家督相続の制度は無くなりましたので、遺産分割協議をしなければならなくなりました。そこで調整ができないと、相続人間の争いに発展することになります。

 遺産分割はお金の問題である上、亡くなった方(被相続人)への思い、生前の被相続人に対する寄与など感情面がからむことも多く、なかなか意見の調整がつかないのです。

 このような紛争を未然に予防するのが遺言です。遺された相続人は亡くなった遺言者の意思を知ることができ、紛争をかなりの程度防ぐことができます。
 遺言を上手に作成しておけば、遺産分割協議を不要とすることも可能です。
 生前の相続人の一人に対するお金の動きがどのような事情で行われたかを、他の相続人に知らせることも可能となります。

 現在は円満であっても事情によって人間関係・感情は変わるものですし、遺産に対する思い入れも異なります。また、経済状況が変化し、どうしても遺産を少しでも多く得たい、という相続人が現れるかもしれません。
 

 自分の好きなように財産を相続させることができる

 法律で規定された配分ではなく、自分の思い通りに遺産を分割するためです。

 民法には被相続人の遺産を、親族のどの範囲に、どのような割合で配分するかが規定されていますが、どう分けるか(分け方)については規定していません。

 一生かけて苦労して築き上げてきた財産、先祖代々引き継がれてきた財産が、まったく望みもしない形で思いも寄らない人物に分配されてしまっては、残念なことです。

 また、遺言で具体的な遺産の分け方まで明記しておけば、相続人が悩むケースも少なくなります。民法の定めと異なる遺産分割を望むときは、誰にどのように分配するかを指定した遺言を書いておくことが重要です。

 とくに、もともと相続権の無い内縁の妻(夫)や、配偶者の連れ子、亡くなった長男の嫁などに遺産を遺したいというようなときには、遺言を作っておかないと、相続人が、その人たちにも分配するような内容の遺産分割協議をしてくれない限り、いっさい財産がいかないことになります。

 ただし、相続人の遺留分について考慮しなければ、後にトラブルを引き起こす遺言になることもあります。遺言を書く場合は、あらゆる状況を想定し、専門家のアドバイスなどを得ながら書くとよいと思います。


 また、相続人の誰かを相続人にしたくない場合(廃除といいます)、子供を認知したい場合(死後認知)なども遺言を書いておく必要があります。

あなたは本当に遺言を作っておかなくても大丈夫?

 自分には財産も無いし、隠し子もいない、相続人も仲が良いので、遺言なんか書く必要はない、と考えて遺言を作成しない方もいらっしゃるかもしれません。

 しかし、財産は無いと思っていても、預貯金を集めてみると、かなりの額になったり、生命保険、退職金、タンスの中に眠っていた株、先祖代々伝わる骨董品など、他者から見ればひと財産あるという場合が多いのです。


 また、自分の死後は、単純に法律に従って分けてもらえればいいとお考えの方もいらっしゃるかもしれません。

 しかし、民法に規定されているのは割合だけです

 民法に規定されている遺産分割の基準は、「遺産の分割は、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをする」とされているだけなのです(民法906条)。

 従って、遺産が金銭だけでなく何種類もあるような場合、誰がどの財産をどのように分けるのかについては、明確に規定されているわけではないのです。

 一旦遺産争いが始まると、それまで仲が良かった親族間の関係が険悪になり、その後は音信不通にまでなってしまうというケースも珍しいことではありません。

 きちんとした遺言さえ作っておけば、遺産分割協議の必要をなくすこともできます。自分の死後、残された人に少しでも嫌な思いをさせないためにも遺言を作成しておくことが必要です。

遺言は取り消すこともできる

 一度遺言を作ったとしても、人の心は変わるのが当たり前です。ところが一度遺言を作成してしまったら二度と取り消せないとなると、遺言を作成する人などいなくなってしまうでしょう。

 遺言は、いつでも全部または一部を撤回したり、変更することができます

 ただ、民法は、撤回や変更は「遺言の方式」に従ってしなければならないと規定しています(民法1022条)。
 遺言は遺言で取り消す、取り消したうえで別の内容の遺言を書いておけば結果として撤回または変更したことになるというものです。 

 ところが、遺言を作成してしまったら、再び遺言を作成しなければ撤回も変更もできないとなると、遺言者としては負担でしょう。

 そこで民法は、遺言の撤回、変更については別にも規定をおいています。

①前の遺言の内容と後の遺言の内容とが抵触するとき(民法1023条1項)
 
遺言書を作成後、前の遺言と内容の矛盾する別の遺言を作成すれば、前の遺言は後の遺言と抵触する範囲で撤回したものとみなされます。

 遺言が複数ある場合、日付が新しいものが優先します。ただし、日付の新しいものが優先するといっても、日付の古い遺言がすべて無効になるわけではありません。内容がくい違う部分についてのみ、新しい遺言の内容が優先するということです。新しい遺言には書かれていないその他の部分については、古い遺言も有効です。

②遺言と遺言後の行為が抵触するとき(民法1023条2項)
 
後日、別の遺言を書かなくても、前の遺言の内容となっている物を売ったり贈与したりすれば(「遺言後の生前処分」)、遺言は撤回したものとみなされます。

③遺言者が故意に遺言書や遺贈の目的物を破棄したとき(民法1024条)
 
遺言を故意に(わざと)破ってしまえば、その遺言を撤回したものとみなされます。破らなくても塗りつぶしたり抹消したりすればそれも「破棄」したことになります。

 遺言を作成しても、簡単に撤回したり内容を変更したりすることができることがお解かりでしょう。
 遺言の重要性からしますと、ぜひ作成しておかれることをお勧めします。

遺言の方式・種類

 遺言は法律で定められた形式で作成されていなければ、法律上無効です(民法960条 「遺言は、この法律に定める方式に従わなければ、することができない」 )。

 では民法にはどのようは方式が定められているのでしょうか。

 
遺言の方式には普通方式特別方式があります。

 <普通方式>

①自筆証書遺言

②公正証書遺言

③秘密証書遺言

<特別方式>

①危急時遺言

②隔絶地遺言

※ 特別方式は、死期が迫った方が遺言をしたいが、普通方式では間に合わないといった場合(臨終時の遺言)や伝染病で隔離されている人などに認められた特別な遺言方式です。普段はあまり利用されることはありません。

 

 長所

短所 

自筆証書
遺言

①誰でも一人で、いつでも簡単に作成できる。

 

②費用がほとんどかからない(紙とペンと印鑑は必要)。

 

③証人・立会人の必要がない。
④遺言をしたことを誰にも秘密にしておける。

①遺言書を紛失したり、死後に発見されないおそれがある。
②遺言内容に不満な相続人に遺言を隠される恐れがある。
第三者によって変造・偽造されるおそれがある。
④家庭裁判所で検認手続きが必要。
⑤方式に不備があり、無効になるおそれがある。

公正証書
遺言

①公証人が作成してくれるので、方式不備で無効になることはない。
②原本を公証人が保管するので紛失や偽造・変造の恐れが無い。
③文字の書けない人も遺言できる。
④検認手続きが不要。
 

①遺言書の存在と内容を秘密にしておけない(証人・公証人には知られる)。
②遺産額に応じて公証人の手数料が必要となり、手続が面倒。

 

③証人二人以上の立会いが必要。

秘密証書
遺言

①遺言書の内容の秘密を守れる。
②代筆や、ワ−プロ書きも構わない。
③偽造・変造の恐れが無い。
④署名・押印ができれば文字が書けない人も遺言できる。

①紛失したり、隠されたりする危険がある。
②作成に若干の費用と手間がかかる。
③執行にあたって検認手続きが必要。
④証人二人以上が必要。

遺言を書いておくことをお勧めするケース

■特定の子供に介護、援助をうけている場合
 老後、世話になっている子供に少しでも多く相続させたいと思うことは自然なことですが、遺言がなければ、遺産は子供たちにそれこそ平等に分割されてしまいます。確かに、寄与分というものが認められる可能性はありますが、要件が厳しいため、実際の介護に費やす時間・費用・労力と比べると十分ではありませんし、実際上、生前は寄り付きもしなかった相続人が強硬に相続権を主張してくることが多いのも事実です。ですから、このような場合は、やはり、遺言書によって明確に意思を示しておきましょう。


■子供がいない場合
 遺言を作成しておかなければ争いになる場合が多いです。
 子供がいなければ、親が亡くなっていることが多いので、兄弟姉妹が相続人となることになりますが、手続きの複雑化、相続人数が増える等(一般的に、明治~昭和初期の家族は、子供(兄弟姉妹)が多い、甥姪にも相続権が発生する可能性が高い)の問題に備えるため、遺言を作成しておくべき場合といえます。


■財産の種類・量が多い場合(不動産が多数、証券、預貯金、ゴルフ会員権など財産が分散している場合)
 当然少しでも多く遺産を相続したいと考える相続人間で紛争になることが予想されますので、遺言を作成しておく場合といえます。
 また、必ずしも、相続人が全ての遺産を見つけ出せる訳ではありませんし、調査のために様々な書類の準備が必要なため、容易には遺産調査ができません。被相続人にとってみれば、自分の財産のことですからどこに何があるかわかっているでしょうし、簡単に確認することもできるでしょうから、生前に相続人のために財産を整理しておく意味でも遺言書を書いておくべきといえます。


■事業主の方で、特定の人に事業を継承させたい場合
 複数の相続人がいる場合、事業は相続人で分割されてしまい、事業を維持、存続することが困難になります。事業を特定の人に承継させたいのであれば、遺言書で承継人を指名しておいた方が良いでしょう。


■既に相続人間が不和な場合
 被相続人が遺言書で分け方を決めておくべき場合といえます。


■相続すべき親族がいない場合
 相続人がいない場合、遺産は最終的には国庫に帰属してしまいます。国に帰属される前に、生前お世話になった人にあげたい、慈善団体等に寄付したいとお考えであれば遺言書を作成しておきましょう。


■再婚した夫婦の場合 
 離婚後に再婚した方で、前配偶者との間に子供がいる方は、現在の配偶者(及び子)とともに前配偶者との間の子も相続人になるため、相続争いになる可能性が高いことから遺言を作成しておくべき場合といえます。


■婚姻届を出していない夫婦(内縁の配偶者)の場合
 婚姻届を出していない夫婦、いわゆる「事実婚(内縁の配偶者)」には、法律上、相続権はありません。遺言により、事実上の配偶者である相手に贈与しておくべきでしょう。


その他、法定相続人以外の者に財産を残したい場合

■法定相続人に相続させたくない場合
 
何らかの理由でどうしても一部の相続人に相続させたくない場合(放蕩息子、既に破綻している配偶者等)には、遺言により対策をしておく必要があります。

遺言を書いてみましょう。

 遺言の作り方には法律上何種類かあるのですが、自分で作る「自筆証書遺言」と、公証人役場で作成する「公正証書遺言」が大半です。
 どちらかを選ぶとすれば、後の紛争のリスクが少ない公正証書遺言の作成をお勧めします。

 しかし、自筆証書遺言は、いつでもどこでも思ったときに作成できて、費用もかかりませんので、一度書いてみてはどうでしょうか。

 但し、後に述べるとおり、遺言の作成の仕方は民法に定めがあり、どんな形式の遺言でも有効というわけではありません。法律で定められた形式で作成されていなければ、その遺言は法律上は無効となってしまいます。

 
せっかく作った遺言が法律上意味が無いと勿体無いですので、ご自身で作成された遺言が法律上有効なのか、こんな内容の遺言にしたいがどんな言葉で書けばいいのか等について、自分ではよくわからない場合には、弁護士などの専門家に相談されることをおすすめします。

遺言にはどんなことを書いてもよい?

 遺言は民法などの法律で定められた事項についてだけ法的な効力を持ちます。

 形式的に有効な遺言であっても、書いた事柄の全てに法的な効力があるとは限りません。

 たとえば、「家族仲良く暮らしなさい。1日に1度は私のことを思い出し、お墓参りには毎年家族皆で来るように。」と遺言書(世上遺言」という)に書いても、遺言者の希望を伝えるという意味はありますが、法的な効力はありません。

 ただし、遺言内容の一部にこのような効力のない遺言が書かれていたとしても、その部分について法的効力がないだけで、それによって遺言全体が無効になることはありません。

 遺言に法的な効力が生じる事項は、民法などの法律で定められた次の事項に限られます。

 
それ以外の事項については、遺言としての法的効力を生じません(一般の方には難しい言葉も混じっていますので、ご不明な点はお近くの専門家にご相談ください)。

【相続財産に関すること】
 1 相続人の相続分の指定又は指定の委託(902)

 2 遺産分割方法の指定又は指定の委託(908)

 3 推定相続人の廃除又は廃除の取消し(893・894)

 4 特定の遺産を特定の相続人に「相続させる」旨の遺言

 5 特別受益の持戻し免除(903③)

 6 遺産分割の禁止(908)

 7 遺贈の減殺方法の指定(1034但書)

 8 相続人相互間

【相続財産の処分に関すること】
 
1 遺贈

 2 財団法人の設立(寄付行為)(41②)

 3 信託の設定(信託法2)

【身分に関すること】
 
1 子の認知(781②)

 2 未成年後見人、未成年後見監督人の指定(829・848)

【遺言の執行に関すること】
 
1 遺言執行者の指定又は指定の委託(1006)

 2 遺言執行者の職務内容の指定(1016①但書・1017①但書)

【その他のこと】
 
1 祭祀承継者の指定(897①但書)

 2 負担付遺贈遺言の取消(1022)

 3 生命保険金の受取人の指定・変更

遺言能力とは

 遺言はあくまでも法的な効力を期待して書くものです。

 従って、遺言者が遺言をするときには、遺言の法的な効力(意味内容)を理解し、判断することができる能力(遺言能力)を有していなければなりません。

 高齢になって判断能力がなくなってからした遺言は、相続人の間で、有効無効の争いが起きないともかぎりません。したがって、遺言は、元気なうちに備えとしてしておくべきです。

 なお、精神上の障害により判断能力がないとして、家庭裁判所から後見開始の審判がされた方(成年被後見人)でも、遺言するときに意思能力(判断能力)さえあれば有効な遺言をすることができます。

【遺言能力】

未成年者でも15歳になっていれば遺言することができます(親(法定代理人)の同意は必要ありません)(民961)。
成年被後見人でも、遺言するときに、一時的に正常な判断ができる状態に戻っているときであれば遺言できます。ただし、この場合は二人以上の医師の立会いが必要です(民973)。
被保佐人、被補助人は、保佐人・補助人の同意がなくても、単独で遺言することができます。

目の不自由な方の遺言

 目が不自由で、文字を書くことが出来ない方が遺言を作成したい場合。

 遺言の方法には、上記のとおり、自筆証書遺言、秘密証書遺言、公正証書遺言がありますが、自筆証書遺言は全文を自分で書く必要がありますし、秘密証書遺言は代筆が可能ですが署名押印をしなければなりません。

 よって、公正証書遺言によることをおすすめします。

 公正証書遺言の場合、遺言の内容を証人2名の立会いのもと、公証人に口頭で伝えればよく、公証人が公正証書を読み上げるのを聞いて内容を確認し、遺言者が文字が書けない場合、公証人がその理由を記載して、代わって署名してもらうことができます

言葉が不自由な方の遺言

 言葉が不自由な方は、口頭で遺言内容を述べることができないので、公正証書遺言はできないとされてきましたが、1999年の民法改正で、遺言の内容を口頭で述べる代わりに通訳者の通訳又は自書でよいをされたため、言葉の不自由な方も公正証書遺言でできるようになりました。

「遺贈」と「相続させる遺言」の違い

 遺贈は相続人、相続人以外のいずれに対してもできますが、相続させる遺言は相続人に対してしかできません。

 次に、遺贈は民法に規定がありますが、相続させる遺言は規定がありません。

 最高裁判決は、相続させる遺言も遺贈と同様、遺言者が死亡して遺言の効力が生じると同時に対象財産の権利移転が生じるとしています。
 同判決は、受取人が相続人の場合、遺言の文言から見て遺贈であることが明らかであるか、遺贈と解釈すべき特別の事情が無い限り、相続させる遺言と見るべきと判断しました。

 なお、不動産の遺贈の場合、以下の点で受取人に不利になります。

① 遺贈による所有権移転登記は単独では申請できず、他の相続人又は遺言執行者の協力が必要になる。
②対象財産が借地権・借家権の場合、遺贈による権利移転については貸主の承諾が必要。
③対象財産が農地の場合、権利取得に農業委員会又は都道府県知事の許可が必要になる。

※ 相続人に財産を取得させる内容の遺言を作成する場合、通常は「相続させる遺言」を作成します。

※ 以前は登記のときに支払う登録免許税が遺贈の場合は相続させる遺言の場合の5倍とされていましたが、現在は同率とされており、この点で有利不利はありません。

遺言の保管方法

 遺言は書面ですることが要求されていますが、その遺言書を見つけてもらわなければなりません。発見してもらえなければ、遺言は何の意味もありません。

 従って、遺言書は亡くなった直後にすぐにわかるような場所で、かつ隠されたり勝手に書き換えられたりする心配の無い場所に保管しておく必要があります。

 身の回りでそのような場所が無いか探してみましょう。
 銀行の貸金庫、自宅の金庫、鍵のかかる抽斗などに保管する方が多いようです。
 そのような場所が見つからない場合は、以下の記述を参考にしてください。


①公正証書遺言の場合
 
公正証書による遺言は、遺言書の原本が公証役場に保管され、遺言者には公正証書の正本と謄本が交付されます。従って、相続人らに公証役場に遺言書を作成してあると伝えておけば足ります。

 遺言書の存在が明らかになっても、相続人らが公証役場を訪れて遺言書の内容を教えて欲しいと要求したり、閲覧を請求しても、公証人がこれに応じることはありませんので、遺言の内容の秘密を保てます。もっともお勧めの方法といえます。

②弁護士に預ける場合
 
自筆証書遺言や秘密証書遺言を作成した場合、遺言書作成の際にアドバイスを受けた弁護士に保管を頼むという方法があります。
 弁護士は守秘義務を負っており、職務上知りえた事実を第三者に洩らすことは禁止されています。
 従って、遺言書の存在を秘密にしておくことも可能です。
 但し、弁護士が相続開始の事実を確実に知りうるとは限らないという問題があります。

③第三者に預ける場合
 
自筆証書遺言の場合、配偶者をはじめとする親族に預けることも多いようです。
 しかし、法定相続人など遺産に利害関係のある方に預ける場合には、隠匿、改ざんの恐れがあり、後に紛争の種になりかねませんので、遺産に何の利害関係のない公正な第三者に保管してもらうようにしましょう。 
 遺言で遺言執行者を定めた場合には、遺言執行者に預けておくのが通例です。

遺言に記載された財産受取人が先に死亡した場合

 遺言で財産を受け取りを指定されていた相続人が、遺言者より先に死亡していたとき、その財産はどうなるのでしょうか。

 遺贈の場合、民法に規定があり、このような場合は遺贈の効力は生じないとされています。

 相続させる遺言の場合、遺贈の規定が適用されて無効となるのか、受け取りを指定されていた相続人の相続人が代襲相続するのか、下級審の判断が分かれていました。

 しかし、この点について、平成23年2月22日最高裁判決により判断がなされました。

 同判決は、「上記のような『相続させる』旨の遺言は、当該遺言により遺産を相続させるものとされた推定相続人が遺言者の死亡以前に死亡した場合には、当該『相続させる』旨の遺言に係る条項と遺言書の他の記載との関係、遺言書作成当時の事情及び遺言者の置かれていた状況などから、遺言者が、上記の場合には、当該推定相続人の代襲者その他の者に遺産を相続させる旨の意思を有していたとみるべき特段の事情のない限り、その効力を生ずることはないと解するのが相当である。」としました。

 その理由は、「『相続させる』旨の遺言をした遺言者は、通常、遺言時における特定の推定相続人に当該遺産を取得させる意思を有するにとどまるものと解される」としました。

 したがって、代襲相続が認められるか否かは、「当該『相続させる』旨の遺言に係る条項と遺言書の他の記載との関係、遺言書作成当時の事情及び遺言者の置かれていた状況などから、遺言者が、当該推定相続人の代襲者その他の者に遺産を相続させる旨の意思を有していたとみるべき特段の事情があるか否か」、にかかってくることになります。

 「特段の事情」を裁判所がどう評価してくれるかは不確実ですので、遺言を作る際、自分が財産を相続させようと考えている相続人の方が自分より先に亡くなるようなことが考えられる場合、これに備えた条項も作っておくとよいでしょう。

財産を未成年の孫に遺贈したいが、遺贈した財産の管理が不安な場合

(ご質問)
 自分の次男夫婦の子、すなわち孫に自分の財産を遺贈したいが、遺贈した孫の財産を次男夫婦が自分たちのために費消してしまう可能性があるなど、孫の財産の管理に不安がある場合、何かよい方法はないでしょうか。

(回答)
 未成年の子は、父母に親権があり(民法818条1項)、親権者は子の財産を管理します(民法824条1項)。従って、遺贈され、孫のものとなった財産は、原則として次男夫婦の管理に服することになります。
 このような場合、質問者としては、民法830条「第三者が無償で子に与えた財産の管理に関する特例」を利用することを検討しましょう。

民法830条1項:無償で子に財産を与える第三者が、親権を行う父又は母にこれを管理させない意思を表示したときは、その財産は、父又は母の管理に属しないものとする。

 孫に遺贈する際、次男夫婦に管理させないことを遺言中に明示しておけば、次男夫婦の管理権を排除できます。遺言中に、他に信頼できる人を管理人に指定しておくこともできます。

遺言による認知(遺言認知)

 認知とは、父と嫡出でない子との事実上(生物学上)の親子関係を、法律上の親子とする方法です。

 通常、「認知届」を子の本籍地または住所地の市役所に提出して行います。
 
 認知には意思能力があれば足り、認知をする者が未成年であっても、親権者の同意は必要ありません。
 
 但し、成年の子は、その承諾が無ければこれを認知することはできません(民法782条)。子が未成年の間は放置しておきながら、その子が成年になった後に認知することで親が自己の利益を図ろうとするのを抑止する趣旨です。

 認知には、大きく分けて任意認知強制認知があります。
 
 任意認知とは、父が自らの意思で進んで行う認知の方法です。届出によって行う一般的な認知と遺言による認知(遺言認知)がこれに含まれます。
 
 一方、子、その直系卑属又はこれらの者の法定代理人は、認知の訴えを提起することができるとされています。この訴えによる認知を強制認知あるいは裁判認知といいます。
 ただし、裁判認知は、父又は母の死亡の日から3年を経過したときは、訴えの提起はできなくなります(民法787条)。

 遺言認知は、父が遺言の方式に従って遺言をし、その効力発生(遺言者の死亡)後、遺言執行者が遺言書の謄本を添付して、戸籍の届出によってする任意認知の一つです。

 認知の効力は、遺言の効力発生(遺言者の死亡)と同時に発生しますので、遺言執行者による届出は報告的届出ということになります。

 遺言執行者は、就職の日から10日以内に、認知に関する遺言の謄本を添付して届出をします(戸籍法64条)。

 遺言執行者には、①遺言者が遺言で指定した者又はその指定を第三者に委託し、委託された者が指定した者(民法1006条1項、2項)と、②利害関係人の申立てにより家庭裁判所が選任した者(民1010条)の2通りがあります。

 遺言執行者に指定された者は、指定によって当然に遺言執行者になるのではなく、諾否の自由があり、承諾によって就職することになります。

 遺言によって認知をしようとする方は、弁護士等の専門家に相談のうえ、当該弁護士を遺言執行者として指定しておかれることをお勧め致します。 

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弁護士:須山幸一郎

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