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相続放棄の基礎知識・Q&A

相続放棄の基礎知識を総ざらいしましょう。

1.相続放棄の基本に関する質問
2.相続放棄の手続に関する質問
3.相続放棄の期限に関する質問
4.相続放棄と他の相続人との関係に関する質問
5.相続放棄と負債・財産に関する質問
6.相続放棄の取り消し・無効に関する質問
7.相続放棄をした後に関する質問
8.相続放棄と税金に関する質問
9.相続放棄と関連する制度

1.相続放棄の基本に関する質問

相続放棄とは何ですか?

 ごく簡単にいうと、亡くなった方(相続人)の相続財産(プラスの財産、マイナスの財産の両方)を相続しなくて済むようにするための制度です。

 人(被相続人)が死亡すると、
原則として被相続人の権利義務の一切が相続されます。
 プラスの財産はもちろん、マイナスの財産、すなわち借金や連帯保証債務も当然に相続されます

 しかし、被相続人が多額の借金を抱えたまま死亡したような場合、これを全部承継しなければならないとすると相続人に酷となります。

 そこで、民法は「
相続放棄」という制度を用意しました。

 相続放棄をすると、その被相続人の相続について、初めから相続人とならなかったものとみなされ、借金や連帯保証債務を相続しなくてすみます。

相続放棄をするとどのような影響がありますか?

 相続放棄をすると、その被相続人の相続について、初めから相続人とならなかったものとみなされ、借金や連帯保証債務を相続しなくてすみます。

 したがって、被相続人の借金を返済しなくてよくなることは勿論、他の相続人と遺産分割協議をしたり、相続税申告をする必要がなくなります。

 他に相続人がいる場合、他の相続人の相続分が増加します。

 同順位の相続人が全員相続放棄をすると、後順位の相続人が相続人となります。

相続放棄をするかどうかを判断するためのポイント

相続財産の確認
  • プラスの財産、マイナスの財産(負債)を調査しましょう。
  • 知らない借金が後から発覚するリスクは無いか、検討しましょう。
  • 被相続人との関係が希薄であったなど、将来どのような負債が発覚するかが分からない場合、リスク回避のため、相続放棄を選択する方が多いです。
相続放棄が出来る期限の確認
  • 相続開始を知ったときから3か月以内に手続が必要です。期限ギリギリでは手続出来ませんので、期限には余裕をもって行動しましょう。
  • 弁護士に依頼する場合、期限の1か月前までを目安としましょう。
他の相続人への影響
  • 自分が相続放棄をすると、次順位の相続人に相続権が移ります。
  • 自分がこれから相続放棄をすること(又は相続放棄をしたこと)について、次順位の相続人に通知する義務はありませんが、必要に応じて、話し合いをしておくことも検討しましょう。
  • 全員が相続放棄するのか、一部の相続人が相続するのかを決めなければならない場合もあります。
  • 当事務所の場合は、次順位、次々順位の方の相続放棄をまとめてお引き受けすることも可能です(相続放棄の申述は、順位に従って順次行います)。
相続放棄をした場合のデメリット
  • プラスの財産(預貯金・不動産・有価証券・車両など)を相続できなくなります。
  • 相続放棄をしても、祭祀財産(遺骨やお仏壇)については、別途対応が必要となる場合があります。
  • 全員が相続放棄をした場合、相続財産清算人の選任を家庭裁判所に申し立てることを検討する必要が生じることがあります。
自分で出来るか、専門家に依頼するか
  • 判断や戸籍などの収集が難しい場合は、弁護士に相談しましょう。
  • 弁護士に依頼をすれば、資料の収集や裁判所に提出する申述書の作成、裁判所とのやりとりを全て行ってもらえることから、スムーズに進められます。

 

相続放棄と相続の辞退の違いは何ですか?

 相続放棄は、家庭裁判所に対して手続を行うことで、法的に相続人の地位を喪失させる制度です。

 一方、相続辞退は、単に相続しないことを表明するにすぎませんので、負債(マイナスの財産)は辞退とは関係なく相続します。
 プラスの財産についても、実際に相続しないためには、他の相続人と遺産分割を行ったり、相続分の放棄・譲渡をしなければなりません。

相続放棄はどこで手続きできますか?

 相続放棄は、相続開始を知ったとき(通常は被相続人の死亡を知ったとき)から3か月以内に、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に手続をしなければなりません。

 被相続人の住民票の除票を取り、管轄裁判所を調べる必要があります。

一部のみの相続放棄は可能ですか?

 相続放棄は、当該被相続人について、初めから相続人で無かったことにする制度ですから、相続放棄をすると、プラスの財産、マイナスの財産を問わず、一律に相続できなくなります。

 つまり、一部の自分にとって都合のよい財産だけを相続し、それ以外の財産を相続放棄するという事は認められません。

相続放棄が出来なくなる単純承認とは(相続放棄でしてはいけないこと)?

処分行為

 相続財産の全部又は一部を「処分」した場合には、相続を単純承認したものとみなされ、相続放棄ができなくなります(民法921条1号)。
 相続放棄を考えている場合、相続財産の処分にはくれぐれも注意しましょう。

 処分行為とは、例えば
 1 被相続人の預貯金を払い出して費消、解約、名義変更
 2 被相続人の不動産の名義変更、売却
 3 被相続人の財産の換金
 などをいいます。


 もっとも、被相続人の預金から、社会的にみて相当な範囲内で葬儀費用の支出をした場合などは、一般に「処分」にあたらないと解されています。
 また、被相続人の預貯金を払い出しても、費消していないのであれば、処分行為にあたらないと考えられます。
 
 被相続人が住んでいた賃貸アパートの解約、携帯電話・公共料金の解約、遺品整理、車の処分、入院費用・税金の支払い、形見分けなどは、しばしば法律相談で質問を受けますが、ケースによるところが大きく、一般論で語ることが出来ません。

 ポイントは、①「処分行為」と評価されるのか、問題のない財産の保全行為である「保存行為」と評価されるのか、②当該遺品に経済的価値が認められるのか
です。

 ①については、被相続人の家屋の倒壊しそうな塀を補修するのは保存行為ですが、家屋全体の解体や売却は処分行為と評価される可能性が高くなります。

 ②については、例えば、被相続人の写真やアルバムなど、主観的な価値はあっても客観的な経済的価値が無いものについて形見分けを行っても問題となることはありません。しかし、被相続人が身に着けていた腕時計や指輪などは客観的な経済的価値が存在する可能性がありますので、注意が必要です。

相続財産の隠匿・消費

 相続放棄をした後でも、相続財産を隠したり、費消してしまった場合には、単純承認をしたものとみなされます。
 債権者等から、相続放棄の無効を主張されることになってしまいますので、注意しましょう。

 被相続人の財産について、何らかの処理をしようとしている場合には、弁護士に具体的事情を相談し、アドバイスを受けてから行うようにすることをお勧めします。

第921条【法定単純承認】

次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。

1 相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。ただし、保存行為及び第602条に定める期間を超えない賃貸をすることは、この限りでない。
2 相続人が第915条第1項の期間内に限定承認又は相続の放棄をしなかったとき。
3 相続人が、限定承認又は相続の放棄をした後であっても、相続財産の全部若しくは一部を隠匿し、私にこれを消費し、又は悪意でこれを相続財産の目録中に記載しなかったとき。ただし、その相続人が相続の放棄をしたことによって相続人となった者が相続の承認をした後は、この限りでない。

既に支払ってしまった場合の相続放棄

 被相続人が負っていた債務(相続債務)を相続人が弁済することは、「処分」=法定単純承認に当たるのかという問題があります。

 これについては、相続人が、自分の固有の(相続人の)財産で債務の弁済をする限り、それは保存行為であって、「処分」には当たらないと解されています。
 福岡高裁は、『期限の到来した被相続人の債務につき,相続人が自己資金で弁済する行為は,民法921条1号の「相続財産の処分行為」には該当しない』と判示しました(福岡高決宮崎支部平成10・12・22)

 しかし、被相続人の債務や滞納していた税金を、被相続人の財産(相続財産)から支払った場合には、それ自体が「相続財産の処分」=法定単純承認にあたってしまう可能性があります。
 したがって、万全のリスク回避をしたいなら、
支払う際に、被相続人の財産からではなく、ご自身の財産から支払い、そのことが確認できる資料(自分の預金口座からの振り込みなど)を残しておくとよいでしょう。

 既に債務や税金について、被相続人の財産から支払ってしまった場合でも、その債務の性質や金額等によっては保存行為と解釈され、相続放棄が受理される余地はあります。
 具体的な事情により判断されますので、支払ってしまった場合でも、あきらめずに一度弁護士に相談されると良いでしょう。

相続放棄と相続分の無いことの証明書の違い

 相続人の中に、被相続人から生前贈与を受けていた方がおり、その贈与の額が法定相続分を超えるような場合、「相続分の無いことの証明書」を作成して相続手続がおこなわれることがあります。

 たとえば、相続人が2名で、うち1人が「相続分の無いことの証明書」(実印・印鑑証明書を添付)を提出することで、もう一方の相続人が単独で相続登記をすることが可能になります。


 相続分の無いことの証明書の交付を求められた相続人の中には、「相続分の無いことの証明書」を作ったことで自分は「相続放棄をした」と勘違いされている方が時々いらっしゃいますが、相続放棄とは全く異なりますので注意しましょう。

 「相続分の無いことの証明書」は登記のための書類にすぎません。負債の支払義務を免れるためには、家庭裁判所で相続放棄の手続をする必要がありますので注意しましょう。

相続放棄をしたら官報に載る?

 相続放棄をしても、官報に載ることはありません。

相続放棄は戸籍や住民票に載る?

 相続放棄をしても、戸籍や住民票に載ることはありません。
 裁判所が勝手に役所に通知することもありません。
 したがって、相続放棄をしたことを自分で話さない限り、第三者に知られる可能性は低いです。
 但し、債権者等の利害関係人は、相続放棄をしたか否かの照会を裁判所にかけることが出来ますので、そのような手続きを取られた場合には第三者に知られることがあります。

生きている間(生前)の相続放棄

 相続開始前(被相続人の生前)に相続放棄をすることは出来ません。
 相続放棄は、相続開始後にのみ可能です。


 たとえ、被相続人が多額の債務を抱えていて、死亡した場合には相続放棄をすることが確実であっても、家庭裁判所に相続放棄の手続をすることが出来るのは、相続開始後となります。

 似た制度に「遺留分の放棄」があります。
 「遺留分の放棄」は、相続開始前に行うことが出来(家庭裁判所での手続きが必要という意味では同じ)、よく混同されがちですが、これとは区別することが大事です。

 遺留分の放棄は、家庭裁判所の許可を得て、被相続人の生前に行うことが可能です。
 被相続人が遺言により長男に事業承継を行うような場合に、長男以外の相続人に生前贈与を行いつつ、当該相続人に遺留分放棄の手続きを取らせておき、相続開始後の紛争を予防するといった場合に利用される制度です。

連帯保証人になっている場合の相続放棄

 被相続人が連帯保証人になっていた場合、相続放棄をすれば、連帯保証債務も相続することはありません。

 しかし、被相続人が誰かの保証人になっていても、それを家族に知らせていないこともあり、相続開始後、長期間が経過したのち、突如債権者から督促が来たことで保証債務の存在が発覚することがあります

 このような場合には、保証債務の存在を知った時(督促状を受け取った時)から3か月以内であれば、相続放棄の申述が受理される可能性があります

 裁判所の審理も慎重になりますので、このような場合には、弁護士にご相談・ご依頼なさることをお勧めします。

一方、相続人自身が、被相続人の借金の連帯保証人になっていた場合には、相続放棄をしても、自身の連帯保証債務は残ります

相続放棄してもお墓、お仏壇は承継できる?

 お墓・仏壇・仏具・位牌などは祭祀財産といいます。

 祭祀財産は、相続財産には含まれません

 したがって、相続放棄をしても、これらを引き継ぐことは可能です。
 
引き継いでも単純承認とみなされることはありません。

【民法第896条】
相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。


【民法第897条】
系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する。
2 前項本文の場合において慣習が明らかでないときは、同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所が定める。

2.相続放棄の手続に関する質問

相続放棄の手続費用はいくらですか?

 自分で行う場合は、戸籍謄本や住民票を取り寄せる実費、申述書に貼る収入印紙(800円)、郵便切手(800円程度)が必要です。

 弁護士に依頼する場合は、これに弁護士費用がかかります。
 弁護士費用は各弁護士によって異なりますが、1名につき5万円~15万円程度と弁護士によって差があります。

相続放棄をするための必要書類は何ですか?

 相続放棄は、相続開始を知ったとき(通常は被相続人の死亡を知ったとき)から3か月以内に、被相続人の最後の住所地の家庭裁判所に手続をしなければなりません。

相続放棄の必要書類は、概要、以下のとおりです。

  • 相続放棄申述書(家庭裁判所に用紙があります。裁判所のサイトからダウンロードも出来ます。)
  • 相続放棄をする方(相続人)の戸籍謄本
  • 亡くなった方(被相続人)の戸籍謄本
  • 収入印紙(申述人1名ごとに800円)
  • 予納郵便切手(各裁判所によります。800円分程度が多い)

相続放棄の手続の流れを教えてください

 相続放棄は、相続開始を知ったとき(通常は被相続人の死亡を知ったとき)から3か月以内に、被相続人の最後の住所地の家庭裁判所に申述書等の必要書類を提出して行います。

 
3か月の期間は、相続放棄をするか否かを検討する時間(熟慮期間)です。

 期間内に判断が出来ない場合には、裁判所に申し立てて、熟慮期間を延長してもらうこともできます伸長の申立て)。

 また、被相続人が亡くなってから3か月を経過した後も事情によっては相続放棄が認められる場合があります。簡単にあきらめないで、一度は弁護士に相談してみることをおすすめします。

 書類を提出すると、そのまま受理通知が送られてくることもありますが、弁護士に依頼して手続きを取っていない場合、書類に不備があるなどして家庭裁判所は本人を呼び出して事情を聴いたり、内容に関する照会書を申述人宛に郵送することもあります

 質問事項が書かれた照会書が裁判所から郵送されてきた場合、回答書を提出しなければなりません。
 相続人となったことをいつ知ったのか、債務の内容をいつ知ったのか、相続を知った後単純承認行為をしていないか、本当に放棄の意思があるかどうか等の簡単な質問であることが多いようです。
 裁判所は回答書を確認し、問題なければ受理します。

 相続放棄の申述書類を提出してから1か月程度で受理通知書が届くのが一般的です。

相続放棄に印鑑証明書は必要?

 相続放棄の手続きに、実印の押印や印鑑証明書の添付は必要ありません。

 他の相続人から「相続放棄をやっておくから」といって印鑑証明書の送付を求められたというご相談を時折受けますが、相続放棄のために印鑑証明書は必要ありませんので、他の相続人に何のために必要なのかよく確認しましょう。

 相続放棄ではなく、「相続分の譲渡」であったり、遺産分割協議書を作成しようとしている場合があります。

 「相続分の譲渡」や遺産分割は、相続分に応じた割合の負債の相続を免れることは原則として出来ませんので、負債を免れたいのであれば、しっかりと相続放棄の手続きをとりましょう。

未成年者が相続放棄をする方法

【夫が亡くなり、妻である私と子が相続放棄をしたいのですが、子は未成年です。相続放棄はどのようにすればよいですか?なお、夫の両親は既に死亡しており、兄弟もいません。】
 
 相続人に未成年者がいる場合、親権者が未成年者の法定代理人として放棄の手続きを取ります

 しかし、ご質問のように、夫Aが死亡し、妻Bと子Cが相続するような場合、特別代理人を選任しなければならない場合があります。

 この場合、妻Bが子Cの法定代理人として子Cの相続放棄の申述を行うと、放棄によって子Cは初めから相続人でなかったことになりますから、妻Bの相続分が増加します(上記の例で言うと、子Cの法定相続分2分の1も妻Bが相続する=妻Bが全部を相続することになります)。

 このような関係を利益相反関係にあると言います。

 利益相反の関係になる場合、建前上、子Cの権利が害される可能性がありますので、Cについて特別代理人を選任しなければなりません

 もっとも、
①妻Bがまず自ら相続放棄をしたのちに、子Cを代理して放棄をするとき、
②妻Bの相続放棄と子Cを代理してする相続放棄を同時にするときには利益相反行為にはならないとされており、子CについてB妻が法定代理人として放棄することもできるとされています(最高裁昭和53年2月24日判決)。

 親権者が未成年者の相続放棄をする場合、3か月の熟慮期間の起算点は、親権者が未成年者のために相続の開始があったことを知ったときです。

【民法917条】
  相続人が未成年者又は成年被後見人であるときは、民法915条第1項の期間(相続の承認または放棄をすべき期間)は、その法定代理人が未成年者又は成年被後見人のために相続の開始があったことを知った時から起算する。

 親権者だけが相続放棄をし、未成年者の相続放棄を忘れていると、未成年者が被相続人の借金を相続してしまいますので、注意が必要です。

相続放棄を弁護士に相談・依頼する際のポイント(当事務所の場合)

  1. 事前に相続財産や負債の情報を調べておかなくても相談は可能です。
  2. 相続放棄をすべきかどうか迷っているという段階での相談も可能です。
  3. 相続放棄が裁判所に受理されるかどうかの見通しの助言が受けられます。
  4. 相続放棄をすると決めた場合の注意点に関する助言が受けられます。
  5. 弁護士は助言をしますが、最終的な判断はご自身になります。
  6. 費用を明示しない弁護士は避けましょう。当事務所は当ホームページに記載のとおりです。
  7. 複数の相続人でまとめて依頼することも可能です。その際は、少し費用が割引になります。
  8. 相続放棄を依頼すれば、相続放棄の手続に関しては、すべての手続を代行します。

3.相続放棄の期限に関する質問

相続放棄の3か月の期限はいつから始まりますか?

相続放棄が出来る期間は、民法で「自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内」と定められています(民法915条1項本文)。
 こ
の3ヶ月の期間のことを熟慮期間(じゅくりょきかん)といいます。

 相続人が複数いる場合、熟慮期間は、それぞれの相続人ごとに進行します(最判昭和51.7.1)。


 このため、熟慮期間が始まる「自己のために相続の開始があったことを知った時」がいつなのかが重要となります。

 通常は、「
被相続人が死亡したことを知った時」であることが多いでしょう。

 しかし、疎遠であったり音信不通等で、どこで何をしていたかも分からなかったという場合、どれだけ時間が経過しても熟慮期間は始まりません。

 例えば、債権者や自治体から督促状などが送られてくることによって被相続人の死亡事実や負債を初めて知った場合、その時点から熟慮期間が開始することになります。


 客観的には被相続人の死亡から3か月以上経過していますので、相続放棄をするにあたっては、裁判所に対し、自己のために相続の開始があったことを知ったのがいつであるかについて事情説明書・上申書等でしっかりと説明する必要があります。通常は受け取った督促状や消印のある封筒などを添付します。
 督促状などは捨てずに大切に保管しておきましょう。

 相続人が直系尊属又は兄弟姉妹の場合、相続順位は子に次いで後の順位となりますので、被相続人が死亡した事実を知ったからといって、直ちに自分が法律上の相続人となったと認識するとは限りません。

 被相続人に先順位相続人がいないことを知っていた場合、被相続人の死亡と同時に自分が相続人となることを知っていたことになりますので、被相続人の死亡の事実を知ったときから熟慮期間が開始します。

 一方、被相続人に子など先順位の相続人がいる場合には、先順位の相続人が相続放棄をするまでは相続人ではありませんので、先順位の相続人が相続放棄をしたことを知ったときから3か月の熟慮期間が開始することになります。

 なお、先順位相続人が相続放棄をした場合に、先順位相続人は、後順位相続人に自分が相続放棄をしたことを通知する義務はありません。

 先順位相続人が相続放棄をした後、3か月以内に相続放棄をする場合には問題はありませんが、3か月経過後に相続放棄を行う場合には、
裁判所に対し、事情説明書・上申書等でしっかりと説明する必要があります。

【相続財産が全く存在しないと信じたなど、特別な事情がある場合がある場合はどう考えるのでしょうか】

 『相続人において相続開始の原因となる事実およびこれにより自己が法律上相続人となった事実を知った時から3ヶ月以内に限定承認または相続放棄をしなかったのが、相続財産が全く存在しないと信じたためであり、かつ、このように信ずるについて相当な理由がある場合には、相続の熟慮期間は、相続人が相続財産の全部もしくは一部の存在を認識した時、または通常これを認識できるであろう時から起算するのが相当である(最高裁昭和59年4月27日判決)。』


 最高裁判決は、「全く存在しないと信じた」とありますが、一部を認識していたが後になって予想外の負債が存在していたことが判明した場合など、様々なケースも考えられます。
 このような特別な事情を説明しなければならない方については、弁護士に依頼し、しっかりとした内容の事情説明書・上申書を提出する必要があります。

相続放棄の3か月の期限は延長することはできますか?

 相続人は、原則として3か月の熟慮期間内に、相続の承認または放棄の判断をしなければなりません。

 しかし、相続財産の内容が複雑、相続財産が外国等の遠隔地にある、被相続人との関係が疎遠、相続人が外国居住といった場合、3か月の熟慮期間内に相続放棄をするかどうか判断することが難しい場合があります。

 このため、熟慮期間の伸長の制度が認められています。

 熟慮期間の伸長は、被相続人が亡くなった土地を管轄する家庭裁判所に申立てを行い、家庭裁判所が審判を行います。
 伸長の申立ては、熟慮期間内にしなければなりません。

 期間伸長を認めるかどうかは、家庭裁判所が事案ごと、相続人ごとに、一切の事情を勘案して判断します。必ず伸長が認められるとは限りません

 申立てが認められる場合、実務では、3か月程度の伸長が認められることが多いと言われています。
 また、再度の伸長が認められる場合もあります。

 熟慮期間の経過が間近に迫っている場合、すぐに弁護士に相談しましょう。

期限内に相続放棄をしないとどうなりますか?

 3か月以内に相続放棄をしないまま、期限が経過した場合、「単純承認」したものとみなされ、被相続人の財産(プラスの財産とマイナスの財産の両方)を相続します。

死亡から3か月経過した後の相続放棄(手続きの期限を過ぎてしまった)

 相続放棄をするには、「自己のために相続が開始したことを知ったとき」、すなわち被相続人が死亡して相続が開始したこと、自分が相続人になったことを知ったときから3か月以内に家庭裁判所に申述する必要があります。

 では、被相続人には目ぼしい財産も無ければ借金も無いと思って相続放棄の手続をしないでいたところ、被相続人が死亡してから長期間経過した後に、突然金融機関や役所から請求書やお知らせが送付されてきて、被相続人が多額の負債や滞納税金を抱えていたことを知った場合、手遅れなのでしょうか。

 この点、最高裁判所は、「相続人が被相続人に財産や債務が全く無いと信じ、被相続人との関係などからそう信じてもやむを得ないと思われる場合には、例外的に、3か月の期間を、相続人が相続財産や債務の存在を知ったとき、又は知りうべき時から起算すべき」と判示しました。

 つまり、相続人が死亡してから3か月が経過した後でも、最高裁判所が示した一定の場合には相続放棄が可能ということです。
 
 もっとも、形式的には被相続人の死亡後3か月を経過していますので、ご自身の相続放棄が受理されるためには、熟慮期間の起算点、すなわち「自己のために相続が開始したことを知ったとき」がいつであるかをどのように説明するのかが重要となります。

 この点は、依頼する専門家の知識・経験・力量によって大きく異なります
 したがって、被相続人が死亡した日から3か月経過後の相続放棄については、経験豊富な専門家に相談することが重要です。
 一度却下された場合、書類の出し直しは出来ません。一度自分でやってみて、受理されなかった場合に専門家に依頼する、という訳にはいかないことに注意する必要があります。

 当事務所がお引き受けしている「3か月経過後」の事案は、被相続人が死亡してから3か月以上(場合によっては数年)経ってから、突然文書(税金の滞納がある、空き家の相続人である、賃借人が孤独死した等)が送付されてきて、自分が被相続人の相続人であったことを知った、というケースが大半です。
 このような場合は、適切に裁判所に説明することが出来れば、相続放棄は受理されることが大半です。あきらめる前に、一度弁護士に相談してみましょう。
 当事務所では事情をお聞きし、受理可能と判断出来るケースであれば、お引き受けしています。

4.相続放棄と他の相続人との関係に関する質問

相続放棄は相続人全員でしなければならない?一人だけでもできる?

 相続放棄は、相続人全員で手続をしなければならないと勘違いをしている方がいらっしゃいますが、遺産分割協議と異なり、相続放棄は、相続人各人が個別に行うことが可能です。

 長男、次男、長女の3人が相続人で、長男と長女は相続放棄をしたいが、次男は相続したいという場合、次男が相続しても長男と長女は相続放棄が可能です。

 次男の相続手続は、遺産分割協議書ではなく、長男と長女の相続放棄受理証明書で対応することになります。

他の相続人が相続放棄したかの確認方法

 他の相続人が相続放棄をしているかどうかが分からない場合、家庭裁判所にその有無を照会することができます。

 
照会を行えば、申述があれば事件番号、受理年月日等が回答され、申述が無い場合には「見当たらない」と回答されます

 照会の申請が出来るのは、以下の方に限られます。

  1. 相続人
  2. 被相続人に対する利害関係人(債権者等)

 相続放棄をしたかどうか確かめたい場合の典型例は、兄弟姉妹などの後順位相続人が、先順位相続人である被相続人の子や孫が相続放棄したかどうかを知りたい場合です。

 照会先は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。
 照会手数料は無料です。

 照会に必要な書類は以下のとおりです。
 裁判所によって多少異なる場合がありますので、事前に問い合わせておきましょう。

  1. 被相続人の住民票除票
  2. 被相続人及び照会者の戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本(照会者と被相続人との関係がわかるもの)
  3. 照会者の住民票(本籍地の記載のあるもの)
  4. 相続関係図
  5. 手続代理委任状(弁護士に依頼する場合)

相続放棄と代襲相続(自分の子に借金がいく?)

 被相続人の子が相続放棄した場合、被相続人の孫が借金を代襲相続をするということはありません。

 つまり、子が相続放棄をしても、孫が相続人となることはありませんので、孫は相続放棄の手続きをする必要はありません

 子が相続放棄をした場合、孫がいても、相続人の地位は、第2順位(直系尊属)、第3順位(兄弟姉妹)へと移っていくことになります。

5.相続放棄と負債・財産に関する質問

被相続人の借金・債務調査の方法

 遺品の中に、契約書、請求書、督促状、クレジットカード、消費者金融会社のカード、支払いメモなどが無いかを確認します。

 預金通帳からの引き落としの確認は必須です。

 被相続人が、自分で振込支払いをしていた場合、死亡により延滞となりますので、請求書・督促状が届きます。郵便物はこまめにチェックすることが重要です。

 預金の残高不足となることで、督促状が届く場合もあります。

 被相続人の死亡後も、被相続人の口座から振り替えが行われていたことは、単純承認にはあたりませんが、振替えが行われていることを知った後も、漫然と振替えを継続すると、単純承認と評価されてしまう場合もありますので、ご注意ください。

 銀行、クレジット会社、消費者金融などからの借入の有無については、信用情報機関から情報開示を受けることによっても調査が可能です。
 所定の書類を提出すると、回答が得られます。

 相続人がご自身で信用情報開示の手続きをするのが難しい場合、弁護士が代理人となって手続きをすることも可能です。当事務所でも承っていますので、お気軽にご相談ください。

相続放棄と住宅ローン・団信

 住宅ローンについて、団体信用生命保険(団信)に加入していれば、住宅ローン支払中に債務者が死亡した場合、手続きを行えば保険金で住宅ローンが完済されます。

 そのため、住宅ローンについては相続債務として考慮する必要はなくなります。
 他の債務が無い場合には、相続放棄をしなくてよいかもしれません。

 
団体信用生命保険では、通常、住宅ローンの金融機関が保険契約者兼保険金受取人で、被保険者は住宅ローン債務者となっています。

 
そのため、相続人から金融機関に対して住宅ローン債務者の死亡の事実を伝え、必要書類を提出すると、金融機関に対して保険金が直接支払われます。

 
団信の手続きを取ることは、相続放棄に影響を与えることはありません

 
但し、相続放棄をしますと、団信の保険金によりローンが完済された自宅を相続することは出来なくなります
 この点は注意してください。

 住宅ローン以外の債務があり、相続放棄を検討する場合には、団信によりローンが完済された住宅を相続し、同住宅を売却して、売却代金で住宅ローン以外の債務を返済するという選択肢もあります。
 どの方針がもっとも適切かは、専門家に相談してから判断することをお勧めします。

相続放棄をしても遺族年金は受け取れるか。

 相続放棄をしても、遺族年金を受け取ることは可能です。

 遺族年金は、被保険者の収入に依拠していた遺族の生活保障を目的としたものであり、遺族がその固有の権利にもとづいて受給するもので、被相続人の遺産とは考えられていません(大阪家庭裁判所昭和59年4月11日審判)。
  

相続放棄と未支給年金の受給

 相続放棄をしても、法律上の受給権者に該当すれば、未支給年金(死亡した年金受給者に支給すべきなのに、まだ支給されていなかった年金)を受け取ることは可能です。

 
未支給年金は、死亡した年金受給者の「配偶者、子、父母、孫、祖父母、または兄弟姉妹」であって、「死亡の当時に生計が同一だった方」が受給することができるとされています(国民年金法19条1項、厚生年金保険法37条1項等)。

 
上記規定は、相続とは別の立場から一定の遺族に対して未支給の年金給付の支給を認めたもので、相続の対象となるものではないされているからです。

国民年金法19条1項は「年金給付の受給権者が死亡した場合において、その死亡した者に支給すべき年金給付でまだその者に支給しなかったものがあるときは、その者の配偶者、子、父母、孫、祖父母又は兄弟姉妹であって、その者の死亡の当時その者と生計を同じくしていたものは、自己の名で、その未支給の年金の支給を請求することができる。」と定め、同条5項は「未支給の年金を受けるべき者の順位は、第1項に規定する順序による。」と定めている。右の規定は、相続とは別の立場から一定の遺族に対して未支給の年金給付の支給を認めたものであり、死亡した受給権者が有していた右年金給付に係る請求権が同条の規定を離れて別途相続の対象となるものでないことは明らかである』(最高裁判所平成7年11月7日判決)。

相続放棄と生命保険金の受け取り

 相続放棄をする場合の生命保険の受け取りの可否については、保険契約又は約款により、保険金の受取人がどのように定められていたかによって異なります。

1 保険契約で特定の相続人(例えば、子)が指定されていた場合
 
当該指定された受取人固有の請求権(相続により取得した権利ではなく、もともと自分の権利)となりますので、相続放棄とは関係がなく保険金を受け取ることが出来ます。

2 保険契約又は約款で、保険金の受取人が「相続人」とされていた場合
 1.と同様に、相続人固有の権利として、相続放棄とは関係がなく保険金を受け取ることが出来ます。

3 保険契約又は約款で受取人が「被相続人」とされていた場合
 この場合は、被相続人の保険金請求権を相続することになりますので、相続放棄をすると、保険金を受領することは出来ません。

故人の入院費の支払と相続放棄

 被相続人が病院で死亡したケースでは、死亡後に相続人宛に請求書が届くことが多いでしょう。
 相続放棄を検討している間に、請求書が届いた場合、支払ってしまっても大丈夫かという問題があります。

 これについては、「よくあるご相談(故人の入院費を支払っても相続放棄は可能?」にまとめましたのでご確認ください。

相続放棄と未払いの税金(固定資産税は注意)

 相続放棄をすると、被相続人の未払い税金等の支払義務も免れます。

 自己破産の場合は、原則として税金などの公租公課は免除されませんが、相続放棄の場合には、税金等の公租公課も支払いが免除されます。

 4か月以内の準確定申告も必要が無くなります

 もっとも、固定資産税については、地方税法で、毎年1月1日現在の固定資産税課税台帳に登録されている者(所有者)に課税するという台帳課税主義」が取られています。
 この「所有者」として登記されている者が賦課期日前に死亡しているときは、同日において当該不動産を現に所有している者をいうとされています。
 つまり、課税台帳に登録された「所有者」が1月1日に死亡していた場合、「所有者」は「相続人」と読み替えられて取り扱いがなされることになります。
 前年の12月末までに相続放棄が受理されていた場合、「初めから相続人ではなかった」ことになりますから、役所に対し、相続放棄済みであることを主張することが可能です。
 前年までに相続放棄が受理されておらず、納付書が届いた場合には支払いをしなければならない場合があります。

 被相続人の死亡後、相続放棄受理までの間に年をまたぎそうな場合には注意が必要です。このような場合には弁護士に依頼するなどして出来るだけ早く相続放棄の申請を行い、裁判所に審理を急いでもらうように事情を説明した上申書等を提出しておくことが重要です。

6.相続放棄の取り消し・無効に関する質問

相続放棄の取り消し・撤回は可能?

【以前相続放棄の手続きを取ったのですが、高額の定期預金が見つかりました。相続放棄を取り消すことはできますか?取り消せない場合、預金を使っても大丈夫でしょうか。】 


 相続放棄が受理された後は、原則として放棄の取消、撤回はできません。

 取消、撤回を認めると、他の相続人や債権者の地位が不安定になるからです。

 詐欺や強迫により放棄した場合など、特別な事情がある場合には、取消しが認められる場合があります。取消は、放棄の申述をした家庭裁判所に対して、取消の申述を行うことになります。

 預金を使ってしまうと、単純承認となり、相続放棄の効果は覆ってしまいます。
 くれぐれも使ってしまわないようにご注意ください。見つかった預金は次順位の相続人や相続財産清算人に引き継ぎましょう。

相続放棄が無効になる場合とは?

 相続放棄は、裁判所に受理されたら相続放棄の有効が確定するというものではありません。
 相続放棄が受理されたとしても、相続放棄の手続を取る前又は受理された後に、被相続人の財産を処分・費消していたなどの「単純承認行為」があったような場合、受理された相続放棄が無効になってしまう可能性があります。

 
債権者が、相続放棄をした者の単純承認行為があったことを知った場合、相続放棄は無効であるとして裁判を起こしてくる可能性があります。

 
相続放棄が受理されたからといって、被相続人の財産を処分したり、自分の名義に変更したりすることの無いようにくれぐれも注意しましょう。

後から相続放棄の無効を主張される場合もある

 相続放棄が受理されることと、相続放棄の有効無効は区別されています。

 相続放棄が受理されても、後に、債権者から貸金返還請求訴訟等の中で相続放棄の無効が主張される場合があります。

 従って、相続放棄が受理されたからといって、確定的に相続放棄が有効であり、債権者から請求を受ける可能性が無くなる、という訳ではないことに留意する必要があります。

 債権者が上記のような対応を取ることは多くはありませんが、単純承認をした事実が債権者に知られていたり、3か月経過後の相続放棄で、放棄をした者が負債の存在を知っていたことが明らかな場合には、債権者は上記のような対応を取る可能性があります。

7.相続放棄をした後に関する質問

相続放棄をした後の管理義務(改正)

民法改正(令和5年4月)

 従前は、「相続放棄をした者は、その放棄によって相続人になった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、相続財産の管理を継続しなければならない」とされており相続放棄が受理されたからといって、「一切私は関係ない」とはならず、注意が必要でした。
 しかし、
相続放棄をした場合の管理義務について、令和5年4月1日施行の改正民法では以下の規定に改正されました。

改正民法940条1項
 相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は第九百五十二条第一項の相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない。

 上記の改正により、例えば被相続人の住んでいた不動産を現に占有していない方が相続放棄を行った場合、管理(保存)義務を負わないこととなり、改正により負担が軽くなったといえます。

全員が相続放棄をした後の対応

 全員が相続放棄すると、誰も財産を引き継ぐものがいなくなります。
 この場合は「相続人のあることが明らかでないとき」(民法951条)に該当し、相続財産清算人を選任することが可能になります。
 上記選任申立に必要な予納金が100万円近く必要となることが多いため、実務的にはなかなか選任には至れず、事実上相続財産の管理を継続しているケースが大半だと思われます。

 管理が負担だからといって、相続財産の処分を行ってしまうと、単純承認したものとみなされてしまいますので、くれぐれも注意が必要です。

相続放棄をした後の債権者対応

 これから相続放棄を行おうとしている場合、事前に債権者に連絡する義務はありません。

 もっとも、相続放棄が受理されても、家庭裁判所が債権者に通知をしてくれたり、公告してくれる訳ではありません。

 債権者は、通常、相続人が相続放棄をしたかどうかを知りませんので、被相続人宛又は相続人宛に請求書が送付されてきます。
 家庭裁判所から相続放棄の
「受理通知書」が送付されてきたら、そのコピーを債権者に郵送して下さい。

 債権者によっては、「受理証明書」のコピーを求めてきます。
 その場合は、裁判所に申請して「受理証明書」の発行を受け、同証明書のコピーを郵送して下さい。

 以上の対応をして相続人が相続放棄をしたことを知ったら、債権者はそれ以降請求してくることは通常ありません。

 また、相続放棄の準備中に債権者から連絡があった場合も、「相続放棄の手続きをする予定(又は検討中)で、現在その準備中(又は審理中)」である旨を伝えれば、債権者の担当者からは「受理されたら受理証明書のコピーを送って下さい」と言われるのが通常です。

 なお、相続放棄をするかどうかは相続人の意思に任されていますので、債権者が相続人に対し、相続放棄をしないことを強制することはできません
 
 債権者の中には、相続人が相続放棄をする前に、相続財産から支払いを受けようとする者がごく稀にいます。しかし、これを行ってしまいますと、単純承認として相続放棄が出来なくなる恐れがあります。

 債権者からの連絡等に疑問がある場合には、弁護士に相談することをお勧めします。

相続放棄をした後のマンションの管理義務

 他の相続人のどなたかが相続した場合は、その相続人が管理義務を承継します。

 全員が相続放棄をした場合、当該マンションを相続人のどなたかが「現に占有」している場合には、当該占有者は、他の相続人又は相続財産清算人に引き継ぐまでは、その財産の保存をしなければならないとされています。
 「現に占有」とは、被相続人名義のマンションに住んでいるような場合をいいます。

全員が相続放棄すると自宅はどうなる?

 全員が相続放棄をすると、自宅を相続する者がいなくなります。

 この場合、住宅ローンが残っていれば、債権者は自宅を競売にかけるため、家庭裁判所に相続財産管理人を選任手続を取ることが通常です。
 競売手続をするためには、裁判所から書類を受け取る者が必要ですが、相続放棄をした相続人は、債務を相続おらず、書類を受け取るべき者に当らないからです。
 家庭裁判所から選任された相続財産管理人により、競売・任意売却の手続きを経て、自宅の所有権は第三者にわたることになります。

 住宅ローンが残っていない自宅の場合、相続人は相続放棄をしても一定の管理責任を負い続けます。
 管理責任を免れたい場合、自身で家庭裁判所に相続財産管理人選任申立てを行い、自宅を管理人に引き継がなければなりません。

8.相続放棄と税金に関する質問

相続放棄と相続税申告

 相続放棄をすると、初めから相続人とならなかったものとみなされますので、自分は相続税申告をしなくても良いと思いがちです。

 しかし、相続放棄をしても、生命保険の受取人に指定されていれば、自己の固有の権利として生命保険金を受け取ることが出来ます。

 この場合、受け取った生命保険金は、みなし相続財産となりますので、受け取った額によっては相続税申告が必要になります。退職手当金も同様です。

 申告しないと、無申告加算税が課されますので、注意が必要です。
 なお、相続人ではありませんので、2割加算の対象となります。
 非課税財産の対象ともなりません。 

相続放棄と準確定申告

 相続放棄をすると、初めから相続人とならなかったものとみなされますので、準確定申告をする必要はありません。

 準確定申告は相続人の立場で行うことになりますので、準確定申告をしてしまうと、(例えば還付金を受け取ったような場合)単純承認とみなされてしまう場合もありますので注意しましょう。

 相続人全員が相続放棄をし、包括受遺者もいない場合は、相続財産管理人を選任し、相続財産法人が準確定申告を行います。

 国税庁HP「
民法上の相続人が不存在の場合の準確定申告の手続

9.相続放棄と関連する制度

限定承認の制度について

 限定承認とは、相続財産中、プラスの財産の範囲でマイナスの財産を引き継ぐという条件で相続を受けることができるという方法です。

 遺産を清算した結果、借金の方が多かったような場合には、不足分を支払う必要はなく、逆に借金の方が少なければ余った財産を受け継ぐことができます。

 遺産がプラスになるかマイナスになるか分からないようなときに有効といえるでしょう。

 但し、限定承認は、相続放棄者を除く他の相続人全員がそろって行わなければならず、もし相続人の中で一人でも単純承認をした人がいる場合は、限定承認を選択することはできません。

 限定承認の手続は、相続開始を知った時より3ヶ月以内に家庭裁判所に限定承認申述書を提出して行います。

 限定承認手続では、相続財産管理人の選任や財産目録の作成、官報公告手続や債権者への返済など複雑な手続を行わなければならず、面倒だということもあり、制度としては存在しているものの、実務的にはほとんど利用されていません。
 当事務所でも原則として限定承認のご依頼は受けておりません。

相続放棄の手続きを代行します

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内容

説明
法律相談料 無料
手数料 55,000円(税込)

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例:被相続人の配偶者及び子2名の相続放棄をご依頼の場合、55,000円+22,000円×2=99,000円(税込)
(下の早見表をご確認ください)
被相続人死亡から3か月経過後の場合の加算 被相続人の死亡(相続開始)から3か月経過した後のご依頼の場合、ご依頼1名ごとに
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全国どの裁判所への相続放棄にも同一料金で対応します。
・上記手数料には、相続放棄申述書の作成のほか、以下のサービスが含まれます。

  1. 戸籍関係書類の取り寄せ
  2. 「上申書」の作成
  3. 裁判所からの電話問い合わせへの対応
  4. 家庭裁判所から「照会書」が送付された場合の回答助言
  5. 相続放棄が受理されたことの証明書(受理証明書)の取り寄せ取得

・書類取寄せ及び相続放棄申述に伴う印紙代等の実費はご負担頂きます(ご依頼時にお1人につき1万円をお預かりし、最後に精算させて頂きます。使用する実費は戸籍や住民票の取り寄せ通数によって変わってきますが、通常は5000円前後使用します)。

・相続放棄は、先順位の方が相続放棄をすると、多くの方が相続放棄をしなければならない場合もあります。このため2人目以降の費用を低額に抑えています。

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