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相続放棄の基礎知識

相続放棄の基礎知識

相続放棄とは

 被相続人が死亡すると、被相続人の一身に専属していたものをのぞき、被相続人の権利義務の一切が相続されます(民法896条)。

 プラスの財産はもちろん、マイナスの財産、すなわち借金も当然に相続されます
 保証債務も、通常の債務と同様、相続人全員が法定相続分に従って当然に相続します。

 しかし、被相続人が多大な借金を抱えたまま死亡し、相続人がこれを全て負担しなければならないとすると、相続人に酷ですし、債権者も相続人の財産まであてにしていないことから、民法は、相続放棄という制度を用意しました。

 相続放棄をすると、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなされます(民法939条)。従って、被相続人が負担していた借金を相続することはなくなります。

 但し、およそ一切の相続財産を相続することができなくなりますので、プラスの財産も相続できないことになります。
 相続放棄をする際には、被相続人の相続財産を十分に調査してからでないと、後に「プラスの隠れ財産」が大量に出てきた場合などに相続できないことになりますのでご注意下さい。

相続放棄の手続

 相続放棄をするときは、相続開始を知ったとき(通常は被相続人の死亡を知ったとき)から3か月以内に、被相続人の最後の住所地の家庭裁判所に放棄の申述をしなければなりません(民法915条1項、938条)。

 相続放棄の申述をする際に必要な書類は、以下のとおりですが、家庭裁判所によって異なる場合がありますので、申述をする予定の家庭裁判所に事前に確認しておくことをおすすめします。

①相続放棄申述書(家庭裁判所に用紙があります)
②申述人(相続人)の戸籍の記載事項証明書(戸籍謄本)
③被相続人の戸籍の記載事項証明書
④収入印紙(申述人1名ごとに800円)
⑤予納郵便切手(各裁判所の定めによる。800円分程度)

3か月の期間は、相続人が相続財産の調査をして相続放棄をするか否かを検討する時間(熟慮期間)ですので、調査未了のような場合には、裁判所に申し立てて期間を延長してもらうこともできます(民法915条1項)。

 また、3か月を経過した後も事情によっては相続放棄が認められる場合があります。あきらめないで、弁護士に相談してみることをおすすめします。

 相続放棄の申述書を提出すると、家庭裁判所は本人を呼び出すか、相続放棄の申述についての照会書を申述人宛に郵送します(多くのケースが照会書の送付)。
 照会書が届くと、申述人は、相続人となったことをいつ知ったのか、債務の内容をいつ知ったのか、本当に放棄の意思があるかどうか等の回答書を提出します。
 裁判所は回答書を確認し、受理することが通常です。
 戸籍等の資料収集も含め、弁護士に代理人として行ってもらうことも可能です。

3か月の熟慮期間の始期

 相続放棄が出来る期間は、民法で「相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内に、単純承認、限定承認、または相続放棄をしなければならない」と定められています(民法915条1項本文)。
 こ
の3ヶ月の期間のことを熟慮期間(じゅくりょきかん)といいます。
 熟慮期間を経過すると、相続を単純承認したものとみなされてしまい、原則として相続放棄をすることが出来なくなります。

相続人が複数いる場合、熟慮期間は、各相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時から各別に進行します(最判昭和51.7.1)。



【民法第921条】
次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。
1 略
2 相続人が第915条第1項の期間内に限定承認または相続の放棄をしなかったとき。
3 略



 このため、「自己のために相続の開始があったことを知った時」がいつなのかが重要となります。

相続人が配偶者又は子の場合、通常は、「被相続人が死亡したことを知った時」となります。
 よって、実の親子であっても、音信不通等で、どこで何をしているかも分からない場合、死亡の事実を知る由もありませんので、どれだけ時間が経過しても熟慮期間は開始しないことになります。
 このような場合には、債権者からの督促状などを受け取ることにより被相続人の死亡事実及び負債を相続したことを知ることになりますので、その時点から熟慮期間が開始することになります。
 客観的には被相続人の死亡から3か月以上経過していますので、相続放棄をするにあたっては、裁判所に対し、自己のために相続の開始があったことを知ったのがいつであるかについて事情説明書・上申書等でしっかりと説明する必要があります。通常は受け取った督促状などを添付します。

相続人が直系尊属又は兄弟姉妹の場合、相続順位は第2順位、第3順位となりますので、被相続人が死亡した事実を知ったからといって、直ちに自分が法律上の相続人となったと認識するとは限りません。
 被相続人に子(及び直系尊属)がいないことを知っていた場合、被相続人の死亡と同時に直系尊属(又は兄弟姉妹)が相続人となりますので、自分が法律上の相続人となったと認識するのは、被相続人の死亡の事実を知った時ということになります。
 したがって、このときから熟慮期間が開始します。
 一方、被相続人に子など先順位の相続人がいる場合には、先順位の相続人が相続放棄をしたことを知ったときが、自分が法律上の相続人となったと認識するときですので、このときから熟慮期間が開始することになります。

 なお、先順位相続人が相続放棄をした場合に、後順位相続人に通知がなされることはありません。
 先順位相続人が相続放棄をした後、3か月以内に相続放棄をする場合には問題はありませんが、3か月経過後に相続放棄を行う場合には、
裁判所に対し、自己のために相続の開始があったことを知ったのがいつであるかについて事情説明書・上申書等でしっかりと説明する必要があります。


相続財産が全く存在しないと信じたなど、特別な事情がある場合

最高裁の判断は以下のとおりです。


『相続人において相続開始の原因となる事実およびこれにより自己が法律上相続人となった事実を知った時から3ヶ月以内に限定承認または相続放棄をしなかったのが、相続財産が全く存在しないと信じたためであり、かつ、このように信ずるについて相当な理由がある場合には、相続の熟慮期間は、相続人が相続財産の全部もしくは一部の存在を認識した時、または通常これを認識できるであろう時から起算するのが相当である(最高裁昭和59年4月27日判決)。』

上記最高裁判決は、「全く存在しないと信じた」とありますが、一部を認識していたが後になって予想外の負債が存在していたことが判明した場合など、様々なケースも考えられます。

裁判所による調査や審問が行われる場合も十分に考えられますので、このような特別な事情を説明しなければならない方については、弁護士に依頼し、しっかりとした内容の事情説明書・上申書を提出する必要があります。

熟慮期間の伸長


3か月の熟慮期間は、請求によって、家庭裁判所において伸長することができます(民法915条1項但書)。
 相続人は、原則として3か月の熟慮期間内に、相続財産の状況を調査して相続の承認または放棄の判断をしなければなりませんが、相続財産の内容が複雑であるとか、相続財産が外国等の遠隔地にあるなどの事情で調査に相当な日数が必要である場合や、被相続人との関係が疎遠、相続人が外国に居住しているといった事情がある場合には、3か月の熟慮期間内に判断することが困難になるため、伸長の制度が認められています。

 熟慮期間の伸長は、相続開始地を管轄する家庭裁判所に期間伸長の申立てを行い、家庭裁判書が審判を行います。
 申立権者は、利害関係人又は検察官とされています。
 利害関係人とは、相続の承認又は放棄について法律上の利害関係を有する者であり、相続人はこれに該当します。
 伸長の申立ては、熟慮期間内にしなければなりません。
 期間伸長を認めるかどうかは、家庭裁判所が事案ごと、相続人ごとに、一切の事情を勘案して判断します。必ず伸長が認められるとは限りません。

 申立てが認められる場合、実務では、3か月~6か月程度の伸長が認められることが多いと言われています。
 また再度の伸長が認められる場合もあります。

相続放棄の取消し・撤回

 家庭裁判所に相続放棄に申述書が受理された後は、原則として放棄の取消、撤回はできません。
 このような取消、撤回を認めると、他の相続人や債権者の地位が不安定になり、迷惑がかかるからです。
 相続放棄の申述をするか否かは慎重に判断しなければなりません。

 詐欺や強迫により放棄した場合など、特別な事情がある場合には、取消しが認められる場合があります。取消は、放棄の申述をした家庭裁判所に対して、取消の申述を行うことになります(民法919条)。

相続人に未成年者がいる場合

 相続人に未成年者がいる場合、親権者が法定代理人として放棄するのが原則です。
 しかし、例えば夫Aが死亡し、妻Bと子Cが相続するような場合、特別代理人を選任しなければならない場合があります。

 この場合、妻Bが子Cの法定代理人として子Cの相続放棄の申述を行うと、放棄の効果によって子Cは初めから相続人でなかったことになりますから、妻Bの相続分が増加します(上記の例で言うと、子Cの法定相続分2分の1も妻Bが相続する=妻Bが全部を相続することになります)。

 このような関係を利益相反関係にあると言いますが、このような場合、建前上、子Cの権利が害されますので、Cについて特別代理人を選任しなければなりません

 もっとも、①妻Bがまず自ら相続放棄をしたのちに、子Cを代理して放棄をするとき、②妻Bの相続放棄と子Cを代理してする相続放棄を同時にするときには利益相反行為にはならないとされており、子CについてB妻が法定代理人として放棄することもできるとされています(最高裁昭和53年2月24日判決)。

 なお、親権者が未成年者の相続放棄をする場合、3か月の熟慮期間の起算点は、親権者が未成年者のために相続の開始があったことを知ったときです。

【民法917条】
  相続人が未成年者又は成年被後見人であるときは、民法915条第1項の期間(相続の承認または放棄をすべき期間)は、その法定代理人が未成年者又は成年被後見人のために相続の開始があったことを知った時から起算する。

相続放棄に関連して注意すべきこと(法定単純承認)

 相続人が相続財産の全部又は一部を「処分」した場合には、相続について単純承認したものとみなされ、相続放棄や限定承認ができなくなります(民法921条1号)。
 単純承認をしたときは、相続人が、被相続人の一切の権利義務を包括的に承継することになります(民法920条)。

 民法921条1号の「処分」については、相続人が自己のために相続が開始した事実を知り、又は確実に予想しながら、相続財産を処分した場合でなければ相続人が自己のために相続が開始した事実を知り、または確実に予想しながら、相続財産を処分した場合で無ければ本号に当たらない(最判昭和42年4月27日)とされています。
 よって、相続開始の事実(被相続人の死亡)を全く知らずに処分してしまっていたような場合は、この1号に当たらないことになります。

 また、被相続人の預金から、社会的にみて相当な範囲内での葬儀費用の支出をした場合などは一般に「処分」にあたらないと解されています。
 被相続人の財産を一部でも処分する際には、よく考えてから(専門家のアドバイスを受けてから)行うようにすることをお勧めします。

相続放棄と債務の弁済

 被相続人の債務(相続債務)の弁済は、民法921条1号の「処分」=法定単純承認に当たるのかという問題があります。
 これについては、結論から言いますと、債務の弁済そのものは、保存行為であって、「処分」には当たりません。

 しかし、債務の弁済を、相続人固有の財産からではなく、被相続人の財産(相続財産)から支弁した場合には、それ自体が「相続財産の処分」にあたってしまう可能性がありますので注意が必要です。

相続放棄後に注意すべきこと

 相続放棄をした後の相続財産について、相続放棄をした者は、その放棄によって相続人になった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、相続財産の管理を継続しなければならないとされています(民法940条1項)。
 上記管理事務の内容は、熟慮期間中の相続人の管理行為と同様、民法103条の範囲内の行為(保存・利用・改良行為)に限られます。処分行為は出来ません。
 注意義務に反する管理行為によって、相続財産に損害を生じさせた場合には、その賠償責任を負う場合があります。

 また、相続放棄の申述が家庭裁判所に受理されたとしても、その後、相続財産の全部又は一部を隠匿したり、消費をしたり、又は悪意で財産目録に載せなかったりしますと、単純承認したものとみなされてしまいます(民法921条3号)のでご注意ください

相続人全員が相続放棄した場合

 上述のとおり、相続放棄をした場合でも、その放棄によって相続人になった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、相続財産の管理を継続しなければならないとされています(民法940条1項)。

相続人全員が相続放棄をした場合、相続人が現れることは無くなるわけですが、この場合は、「相続人のあることが明らかでないとき」(民法951条)に該当するものとして利害関係人等の申立てにより、相続財産管理人が選任され、相続財産を同管理人に引き継ぐまでは管理を継続しなければならないということになります。

 管理が負担だからといって、相続財産の処分を行ってしまうと、単純承認したものとみなされてしまいますので、くれぐれも注意が必要です。

 上記相続財産管理人の申立人となりうる「利害関係人」とは、相続財産の管理・清算について法律上の利害関係を有する者をいいますが、相続放棄をした相続人もこれに含まれると考えられています。

 したがって、相続財産の管理を免れたい場合には、相続財産管理人の選任申立てを行う必要があります。

3か月経過後の相続放棄

 相続放棄をするには、「自己のために相続が開始したことを知ったとき」、すなわち被相続人が死亡して相続が開始したこと、自分が相続人になったことを知ったときから3か月以内に家庭裁判所に申述する必要があります。

 では、被相続人には借金など無いと思って相続放棄の手続をしないでいたところ、3か月経過後に、突如消費者金融業者から請求書が送付されてきて、被相続人が多額の負債を抱えていたことを知った場合、手遅れなのでしょうか。

 この点、最高裁は、相続人が被相続人に財産や債務が全く無いと信じ、被相続人との関係などからそう信じてもやむを得ないと思われる場合には、例外的に、3か月の期間を、相続人が相続財産や債務の存在を知ったとき、又は知りうべき時から起算すべきとしました。

3か月が経過した後でも、相続放棄が可能な場合があるということです。

 しかし、形式的には3か月を経過していますので、3か月経過後の相続放棄が受理されるには、熟慮期間の起算点、すなわち「自己のために相続が開始したことを知ったとき」がいつであるかをどのように説明するのかが重要となります。
 この点は、依頼する専門家の知識・経験・力量によって大きく異なります。
 正確な知識を持たない専門家に相談した場合、「相続放棄は不可能」と決めつけられることもあるかもしれません。
 したがって、3か月経過後の相続放棄については、経験豊富な専門家に相談することが重要です。

 なお、一度却下された場合、再度の申述は出来ません(出来るのは却下されてから2週間以内に即時抗告することが出来るだけで、書面の作り直し、出し直しは出来ません)。
 このため、一度自分でやってみて、受理されなかった場合に専門家に依頼する、という訳にはいかないことに注意する必要があります。

相続放棄の無効

 相続放棄が受理されることと、相続放棄の有効無効は区別されています。
 相続放棄が受理されても、後に、債権者から相続放棄無効確認請求訴訟を提起されたり、樫木返還請求訴訟の中で相続放棄の無効が主張され、これらが認容される場合があります。
 従って、相続放棄が受理されたからといって、確定的に債権者から請求を受ける可能性が無くなる、という訳ではないことに留意する必要があります。

 もっとも、債権者が上記のような対応を取ることは極めてレアケースです。しかし、単純承認をした事実が債権者に知られていたり、3か月の熟慮期間経過後の相続放棄で、放棄をした者が負債の存在を知っていたことが明らかなような場合には、債権者は上記のような対応を取る可能性があります。

 家庭裁判所は、相続放棄の申述については、却下すべきことが明らかな場合以外は、基本的に受理しますが、相続放棄の有効無効については、別途訴訟で十分な主張立証を尽くさせた上で判断すべきと考えているからです(下級審判例に同様の指摘があります)。

相続放棄と生命保険

 相続放棄をすると生命保険金は受け取れないのかについては、保険契約又は約款により、保険金受取人がどのように定められていたかによって結論が異なります。

  1. 保険契約で特定の相続人が指定されていた場合
    当該受取人固有の請求権となりますので、相続放棄とは関係がなく保険金を受け取ることが出来ます。
     
  2. 保険契約又は約款で受取人が「相続人」とされていた場合
    1.と同様に、相続人固有の権利として、相続放棄とは関係がなく保険金を受け取ることが出来ます。

    「保険金受取人を相続人とする条項は、被保険者が死亡した場合、被保険者の相続人に保険金を取得させることを定めたものと解すべきであり、この約款に基づき締結された本件保険契約は、保険金受取人を被保険者の相続人と指定した場合と同様、特段の事情のない限り、被保険者死亡の時におけるその相続人のための契約であると解するのが相当である(最判昭和48年6月29日)」
    本件保険金請求権は、保険契約の効力が発生した被相続人死亡と同時に、相続人の固有財産となり、被保険者である被相続人の相続財産より離脱しているものと解すべきである(最高裁第3小法廷昭和40年2月2日判決)」
     

  3. 保険契約又は約款で受取人が「被相続人」とされていた場合
    被相続人の保険金請求権を相続することになりますので、相続放棄をすると、保険金を受領することは出来ません。

相続放棄と団信(団体信用生命保険)

 住宅ローンについて、団体信用生命保険(団信)に加入していれば、住宅ローン支払中の債務者が死亡した場合には、支払い手続きを行えば保険金で住宅ローンが完済されます。そのため、住宅ローンについては相続債務として考慮する必要はなくなります。

団体信用生命保険では、通常、住宅ローン債権者である金融機関が保険契約者兼保険金受取人で、被保険者は住宅ローン債務者となっています。
そのため、相続人から金融機関に対して住宅ローン債務者の死亡の事実を伝え、必要書類を提出すると、金融機関に対して保険金が直接支払われます。
団信の手続きを取ることは、相続放棄に影響を与えることはありません。

但し、相続放棄をしますと、団信の保険金によりローンが完済された自宅を相続することは出来なくなります。この点は注意が必要です。
 住宅ローン以外の債務があり、相続放棄を検討する場合には、団信によりローンが完済された住宅を相続し、同住宅を売却して、売却代金により住宅ローン以外の債務を返済することも選択肢として検討する必要があります。

相続放棄と代襲相続

 被相続人の子が相続放棄した場合、被相続人の孫が代襲相続をするということはありません。
 つまり、孫が相続人となることはありません。
 代襲相続が生じるのは、被相続人の子が、相続の開始以前に死亡していたとき、または相続人の欠格事由の規定に該当し、もしくは廃除された場合に限られます。

 したがって、子が相続放棄をした場合、孫がいても、相続人の地位は、第2順位(直系尊属)、第3順位(兄弟姉妹)へと移っていくことになります。

相続放棄と「相続分の無いことの証明」との違い

 相続人の中に、被相続人から相当額の生前贈与(特別受益)を受けていた方がおり、その贈与の額が、その方の法定相続分を超えるような場合、上記特別受益者が、「相続分の無いことの証明書」を作成して相続手続がおこなわれることがあります。
 たとえば、相続人が2名で、うち1人が作成した上記「相続分の無いことの証明書」(実印・印鑑証明書を添付)を提出することで、もう一方の相続人が単独で相続登記をすることが可能となります。


 相続分の無いことの証明書の交付を求められた相続人の中には、このような書面を作成したことをもって、自分は「相続放棄をした」と勘違いされている方が時々いらっしゃいます。
 確かに、このような証明書を交付することにより、プラスの財産について相続することは無くなります。
 しかし、被相続人に負債があれば、その支払義務は被相続人の死亡により、当然に相続されていますので、上記証明書を交付したからといって、支払義務は免れません。

 負債の支払義務を免れるためには、家庭裁判所で相続放棄の手続をする必要があります。
 したがって、他の相続人から「相続分の無いことの証明書」の交付を求められても安易に交付せず、必ず負債を含めた相続財産全体の調査・確認を行うようにしましょう。

 相続人の無いことの証明書は、容易に作成することが出来るものではありますが、相続財産全体の調査・確認を行ったのち、相続放棄の手続きを行うか、遺産分割協議書を作成する方が確実といえます。

相続放棄申述の有無の確認・照会

 相続人が相続放棄をしているかどうかが分からない場合、家庭裁判所にその有無を照会することができます。
 照会を行えば、申述があれば事件番号、受理年月日等が回答され、申述が無い場合には「見当たらない」と回答されます。


ただし、照会の申請が出来るのは、以下の場合に限られます。
1.相続人
2.被相続人に対する利害関係人(債権者等)

 相続放棄をしたかどうか確かめたい場合の典型例としては、兄弟姉妹などの後順位相続人が、先順位相続人である被相続人の子や孫が相続放棄したかどうかを知りたい場合などが考えられます。

 照会先は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。
 照会手数料は無料です。

 照会に必要な書類は以下のとおりです。裁判所によって多少異なりますので、事前に問い合わせをされることをお勧めします。

①被相続人の住民票除票
②被相続人及び照会者の戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本(照会者と被相続人との関係がわかるもの)
③照会者の住民票(本籍地の記載のあるもの)
④相続関係図
⑤委任状(代理人に依頼する場合。代理人になれるのは弁護士のみです。)

相続放棄と遺族年金

 相続放棄をしても、遺族年金を受け取ることは可能です。

 遺族年金は、被保険者の収入に依拠していた遺族の生活保障を目的としたものであり、遺族がその固有の権利にもとづいて受給するもので、被相続人の遺産とは考えられていません(大阪家庭裁判所昭和59年4月11日審判)。

相続放棄と未支給年金

相続放棄をしても、未支給年金(死亡した年金受給者に支給すべきなのに、まだ支給されていなかった年金)を受け取ることは可能です。

未支給年金は、死亡した年金受給者の「配偶者、子、父母、孫、祖父母、または兄弟姉妹」であって、「死亡の当時に生計が同一だった方」が受給することができるとされています(国民年金法19条1項、厚生年金保険法37条1項等)。

上記規定は、相続とは別の立場から一定の遺族に対して未支給の年金給付の支給を認めたものであり、相続の対象となるものではないされているからです。

国民年金法19条1項は「年金給付の受給権者が死亡した場合において、その死亡した者に支給すべき年金給付でまだその者に支給しなかったものがあるときは、その者の配偶者、子、父母、孫、祖父母又は兄弟姉妹であって、その者の死亡の当時その者と生計を同じくしていたものは、自己の名で、その未支給の年金の支給を請求することができる。」と定め、同条5項は「未支給の年金を受けるべき者の順位は、第1項に規定する順序による。」と定めている。右の規定は、相続とは別の立場から一定の遺族に対して未支給の年金給付の支給を認めたものであり、死亡した受給権者が有していた右年金給付に係る請求権が同条の規定を離れて別途相続の対象となるものでないことは明らかである』(最高裁判所平成7年11月7日判決)。

生前の相続放棄

 相続放棄は、相続開始後、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に行わなければなりません。

 相続開始前(被相続人の生前)に相続放棄をすることは出来ません。
 たとえ、被相続人が多額の債務を抱えており、死亡した場合には相続放棄をすることが確実であっても、手続をすることが出来るのは、相続開始後となります。

 「遺留分の放棄」は、相続開始前に行うことが出来(家庭裁判所での手続きが必要という意味では同じ)、よく混同されがちですが、これとは区別することが大事です。

 遺留分の放棄は、家庭裁判所の許可を得て、生前に行うことが可能です。
 被相続人が遺言により長男に事業承継を行うような場合に、長男以外の相続人に生前贈与を行いつつ、当該相続人に遺留分放棄の手続きを取らせておき、相続開始後の紛争を予防するといった場合に利用される制度です。

相続放棄と連帯保証

 被相続人が、第三者の連帯保証人になっていた場合、相続放棄をすれば、当該連帯保証債務も免れます。
 一方、相続人が被相続人の連帯保証人になっていた場合には、相続放棄をすると主債務の支払義務は免れることは出来ますが、連帯保証債務は残りますので、支払義務を逃れることは出来ません。

 なお、被相続人が誰かの保証人になっていても、それを家族に知らせていないこともあり、主債務者が支払いを継続している場合には、保証債務が現実化しませんので、保証債務の存在の発覚が遅れることがあります。
 相続開始後、長期間が経過したのち、突如債権者から督促が来たことで保証債務の存在が発覚することがあります。

 このような場合には、保証債務の存在を知った時(督促状を受け取った時)から3か月以内であれば、相続放棄の申述が受理される可能性があります。
 相続が開始してから相当期間が経過しているため、裁判所の審理も慎重になりますので、このような場合には、弁護士にご相談・ご依頼なさることをお勧めします。

相続放棄と相続債務の一部弁済

 相続人が、相続開始後、被相続人の負債(相続債務)の一部を支払ってしまった場合、もはや相続放棄は出来ないのでしょうか。

 負債の弁済を被相続人の財産から行った場合には、相続財産の処分行為となり、単純承認に該当すると考えられており、相続放棄は出来ません。

 一方、相続人が自己の資金で弁済した場合はどうでしょうか。
 この点については、福岡高裁は、『期限の到来した被相続人の債務につき,相続人が自己資金で弁済する行為は,民法921条1号の「相続財産の処分行為」には該当しない』と判示しました(福岡高決宮崎支部平成10・12・22)。
 裁判所は具体的な理由を述べていませんが、自己の資金で弁済をしても、他の相続債権者を害することにはなりませんし、実質的には「保存行為」とも評価できるからではないかと思われます。

 相続放棄に関する基礎的知識をお持ちであれば、一部弁済を行うということは通常考えにくいところですが、万一弁済を検討する場合には、相続財産からではなく、自己の資金で行うようにしましょう(弁済する前に、弁護士の法律相談を受けることをお勧めします)。

相続放棄と債権者対応

 これから相続放棄を行おうとしている場合、わざわざ自分から事前に債権者に連絡する必要はありません。
 相続放棄の申述を行って受理された後、裁判所から受理証明書の交付を受け、同証明書のコピーを添付して、相続放棄をした旨の連絡を行えば、債権者の方でしかるべき処理がなされ、以後、債権者からの請求が無くなるのが通常です。

  相続放棄の準備中に債権者から連絡があった場合も、「相続放棄の手続きをする予定で、現在その準備中(又は審理中)」である旨を伝えれば、債権者の担当者は「受理されたら受理証明書のコピーを送って下さい」と言うに留めるのが通常だと思われます。

 債権者の中には、相続人が相続放棄をする前に、相続財産から支払いを受けようとする者がごく稀にいます。しかし、これを行ってしまいますと、単純承認として相続放棄が出来なくなる恐れがあります。
 弁護士に依頼をしていれば、債権者対応も弁護士が行いますので、このようなことは起こりませんが、自身で手続きを行う場合には、くれぐれもご注意ください。
 債権者からの連絡等に疑問がある場合には、何も答えずに、弁護士に相談することをお勧めします。

相続放棄とお墓

 お墓・仏壇・仏具・位牌といった祭祀財産は、相続財産には含まれません。
 したがって、相続放棄をしても、これらを引き継ぐことは可能であり、引き継いでも単純承認とみなされることはありません。

【民法第896条】
相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。


【民法第897条】
系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する。
2 前項本文の場合において慣習が明らかでないときは、同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所が定める。

誰が祭祀承継者となるか、という問題は、遺産分割とは区別される問題ですので、混同しないように注意が必要です。

相続放棄と税金

 相続放棄をすると、被相続人が未払い税金等の支払義務も免れます。

 自己破産の場合は、原則として税金などの公租公課は免除されませんが、相続放棄の場合には、税金等の公租公課も支払いが免除されるのです。
 4か月以内の準確定申告も必要が無くなります。

 もっとも、固定資産税については、毎年1月1日現在の固定資産税課税台帳に登録されている者に課税するという「台帳課税主義」が取られており、納付書が届いた場合には支払いをしなければならない場合があります。
 被相続人の死亡後、相続放棄受理までの間に年を跨ぐ場合には注意が必要です。相続放棄をしたのに固定資産税の納付書が届いた場合には、一度専門家に相談されることをお勧めします。

被相続人の債務の有無、金額の調査方法

遺品の中に、契約書、請求書、督促状、クレジットカード、消費者金融会社のカード、支払いメモなどが無いかを確認します。
 預金通帳からの引き落としの確認はもちろん必須です。

 被相続人がATM等で支払いをしていた場合、死亡により延滞となりますので、請求書・督促状が届きます。郵便物はこまめにチェックすることが重要です。
 被相続人の死亡により、預金の残高不足となることで、督促状が届く場合もあります。

 銀行、クレジット会社、消費者金融などからの借入の有無については、信用情報機関から情報開示を受けることによっても調査が可能です。

 

信用情報機関主な加盟会社連絡先
株式会社日本信用情報機構
(略称:JICC)
消費者金融会社0120-441-481
株式会社シー・アイ・シー
(略称:CIC)
クレジット会社0120-810-414
一般社団法人全国銀行協会
(略称:全銀協)
全国銀行個人信用情報センター
銀行0120-540-558

 相続人がご自身で信用情報開示の手続きをするのが難しい場合、弁護士が代理人となって手続きをすることも可能です。当事務所でも承っていますので、お気軽にご相談ください。

限定承認とは

【限定承認】 
 民法922条:相続人は、相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務及び遺贈を弁済すべきことを留保して、相続の承認をすることができる。 

 つまり、限定承認とは、相続財産中、プラスの財産の範囲でマイナスの財産を引き継ぐという条件で相続を受けることができるという方法です。遺産を清算した結果、借金の方が多かったような場合には、不足分を支払う必要はなく、逆に借金の方が少なければ余った財産を受け継ぐことができます。

 遺産がプラスになるかマイナスになるか分からないようなときに有効といえるでしょう。

 但し、限定承認は、相続放棄者を除く他の相続人全員がそろって行わなければならず、もし相続人の中で一人でも単純承認をした人がいる場合は、限定承認を選択することはできません。

 限定承認の手続は、相続開始を知った時より3ヶ月以内に家庭裁判所に限定承認申述書を提出して行います。

 限定承認手続では、相続財産管理人の選任や財産目録の作成、官報公告手続や債権者への返済など複雑な手続を行わなければならず、面倒だということもあり、実務的にはあまり利用されていないようです。

相続放棄法律相談

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相続放棄サポート

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